香港の大手財閥,Hutchison Whampoa Ltd.(HWL)は2004年度(2004年1月~12月)の決算を発表した。同社の中核事業の1つである第3世代携帯電話(3G)事業の売上高は157億4200万香港ドル(1香港ドル=約13.8円換算で約2172億円),金利・法人税・償却費控除前損失(LBITDA)は157億1400万香港ドル(約2169億円),純損失(NLAT)は253億1500万香港ドル(約3493億円)だった。前年度は商用サービス開始後7カ月間の実績で,売上高が20億2300万香港ドル(約279億円),純損失が96億6800万香港ドル(約1334億円)だった(PDF形式の発表資料)。

 HWLは子会社のHutchison 3G HK Ltd.(3HK)やHutchison 3G UK Ltd.(3UK)などを通じ,欧州や香港,オーストラリアで3G事業を手がけている。日本や韓国の通信事業者を除けば,世界で最も早く3Gに注力し,大規模な事業展開を進めている企業の1つである。競合他社に先駆けて基地局などのインフラ投資を行い,加入数を増やすことで3G事業で確固たる地位を確立する戦略を採る。ちなみに3HKにはNTTドコモが24%,NECが5%を出資している。

 インフラ投資に伴う今回のような巨額の損失は,港湾,小売,不動産,エネルギーなど他の事業部門の収益や,非主流部門の売却益を充当することで補っている。ちなみにHWLの2004年度の連結売上高は対前年度比23%増の1794億1500万香港ドル(約2兆4759億円),純利益は同38%増の161億2800万香港ドル(約2226億円)である。

加入数は7カ月で2.5倍

 HWLの3Gサービスの総加入数は2005年3月30日現在で808万。2004年度中間決算で公表した2004年8月18日現在の総加入数は325万6000加入だったので,7カ月ほどで加入数を約2.5倍に増やしたことになる。イタリアと英国における加入数の伸びが大きく,それぞれ356万(中間決算時は135万9000),302万1000(同120万1000)と,総加入数の大半をこの2地域で稼いだ。HWLは「英国では2004年12月に金利・法人税・償却費控除前利益(EBITDA)ベースで収支均衡を達成した。イタリアでも2005年4月にはEBITDAでの収支均衡を実現できる見通しである」とコメントし,3G事業の採算性は改善に向かいつつあると主張する。

 両地域ではプリペイド方式を積極展開しており,加入数に占めるプリペイド比率はイタリアが90%(中間決算時は85%),英国が55%(同36%)と,加入手続きの簡単なプリペイド方式で新規加入の大半を稼いだ格好だ。2004年1月~12月におけるイタリアのARPUは463.91香港ドル,英国は578.04香港ドル。中間決算時(2004年1月~7月)の480.03香港ドル,612.48香港ドルをいずれも下回った。一方で非音声ARPUの比率はイタリアが23%(同10%),英国が20%(同14%)と,データ通信の利用は拡大傾向にある。

 HWLの本拠地である香港の加入数は28万2000(中間決算時は12万5000),ARPUは240香港ドル(同239香港ドル),非音声ARPU比率は23%(同22%)だった。なお,香港ではプリペイド方式の3Gサービスを展開しておらず,全数がポストペイド方式である。

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