米QULACOMM Inc.の日本法人であるクアルコム ジャパンの新社長に,2005年3月1日,山田純氏が就任した。同氏は,2005年の日本市場で「ネットワークの高速化と遅延時間の短縮」「W-CDMA対応LSIの普及」「新需要の発掘」に注力するという。

 ネットワークは,CDMA2000 1x EV-DOの現行規格「IS-856 Rev. 0」を拡張した「同Rev.A」の採用を通信事業者に働きかける。Rev.0では上り方向の伝送速度が153kビット/秒にとどまっているが,Rev.Aでは1.3Mビット/秒に高速化する。上りの速度を上げることにより,携帯電話機が内蔵するカメラで撮影した画像を送信しやすくする。下り方向についても,現行の2.4Mビット/秒から3.1Mビット/秒になる。

 Rev.Aでは,パケット送受信時の遅延時間も50ms以下と短くなる。これにより,IP電話など,データ通信ネットワーク上のリアルタイム通信の実現を図る。「QUALCOMM社としては2005年中に導入の準備を進め,2006年には通信事業者に導入してもらいたい」(同氏)。さらに,Rev.Aはマルチキャスト方式にも対応しており,通信ネットワーク上で放送型サービスができるようになる。

開発コストの抑制をアピール


 W-CDMA対応のLSIについては,同社が国内メーカー向けに販売活動を始めて1年くらいになる。今のところ,国内メーカーがQUALCOMM社のW-CDMA対応LSIを採用した例はないが,国内メーカーが海外市場で強さを発揮できるように支援したいという。「国内メーカーによるW-CDMA端末の開発費用は1機種当たり100億円が常識と言われている。当社のLSIを使えば,その費用を抑えられることをアピールしていく」(山田氏)。現在,携帯電話機の開発費用の多くは,ソフトウエア関連が多くを占める。QUALCOMM社としては,LSIだけでなく,その上で動く「BREW」などのソフトウエアの共通化を進めることで,端末メーカーの開発費用を抑えられるとみている。

 QUALCOMM社の通信技術を採用するKDDIは,CDMA2000による第3世代移動体通信方式(3G)への移行を進めており,山田氏は「3Gは成熟した」とみる。今後は,「3Gネットワークが提供できるサービスとニーズを結びつけ,ビジネスとして収入を上げる技術の開拓に取り組みたい」とした。