三菱電機の大草氏。「DVD事業で大きな利益は期待できない。技術と製造力で赤字のないようにしたい」
三菱電機の大草氏。「DVD事業で大きな利益は期待できない。技術と製造力で赤字のないようにしたい」
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 「2004年度のDVD事業は,プレーヤとレコーダを合わせた事業全体として何とか赤字を免れた。今後についても,国内市場におけるDVDレコーダの消耗戦には出口が見えない。それでもDVDレコーダからの撤退は全く考えていない---」。2005年3月23日に三菱電機が開催したDVDレコーダ「楽レコ」の新製品発表会で,同社 執行役副社長 リビング・デジタルメディア事業本部長の大草文夫氏はこう語り,DVD事業に不退転の決意で臨んでいく姿勢を示した。

「機能に比べ不本意な店頭価格」

 三菱電機は2004年5月にDVDレコーダ市場に参入した。アテネ五輪商戦で既に拡大しつつあった市場の中で,低価格戦略などを打ち出して先行メーカーへ対抗した。その結果,「2004年度は累計で100万台の出荷を達成した。一時期はシェア1位を奪取するなど好評を得た」(大草氏)。しかし店頭価格の下落が続き,競合メーカーも増加する中で,利益率は次第に低下している。「当社の状況はDVDレコーダ市場全体に比べればまだ良い方だったが,それでも搭載している機能に比べ,不本意な価格で販売される結果となった」(大草氏)。

 同社は,以前から資本提携している船井電機との関係を軸として,製造コストの削減とライセンス収入の確保を図っている。三菱電機と船井電機は,DVDプレーヤの開発・生産を担う共同出資会社を1999年に設立。2004年3月からは,DVDレコーダの開発・生産もこの共同出資会社で手掛けている。三菱電機は同社に対し,光ヘッドの製造技術などをライセンス供与している。「船井電機は米Wal-Mart Stores, Inc.へDVDプレーヤを供給するなど強力な販売チャネルを持ち,年間1000万台以上出荷している。1台ごとのライセンス収入が少額でも,合計では大きな金額になる」(大草氏)。三菱電機の自社ブランドによるDVD販売は赤字だったが,船井電機からのライセンス収入などにより,全体として営業利益を確保していると説明する。

 このほか,ルネサス テクノロジと共同開発した汎用の画像処理LSIを採用したり,DVDに搭載するソフトウエアに海外メーカーの開発したものを用いたりといった工夫により,コスト削減に取り組んでいるという。

Blu-ray発売は「HDTVが行き渡るのをメドに」

 今後については,テレビ受像機との一体型や,複数チャネルのテレビ番組を同時に録画・蓄積する映像サーバなどの発売を検討中。DVDと同じ事業部で手掛ける,家庭用の監視カメラとの連携機能なども考えていくという。「DVD事業を今後どう進めていくのかは模索中だが,DVD市場の動向がどう変化しても対応できるよう,技術開発を進めていく」(大草氏)。Blu-ray Discによる次世代光ディスク・レコーダについては,「2006年に地上デジタル放送が全国展開され,HDTV番組を視聴できる環境が整備されるのをメドに,商品を出していきたい」(三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 副事業本部長の古賀良男氏)という計画を示した。

 三菱電機は今回,DVDレコーダ6機種を2005年4月11日から順次発売することを発表した。電子番組表(EPG)の画面表示や操作を改良したほか,上位機種には色情報の補間など6種類の画質改善用LSIを内蔵した。想定実売価格は内蔵ハード・ディスク装置(HDD)の容量が160Gバイトの主力機種「DVR-HE660」で6万円前後,VTR一体型機の「DVR-S310」で5万円前後の見込み。400GバイトのHDDを内蔵した最上位機「DVR-HG865」は11万円前後を見込む。同社は6機種合計で月産5万5000台を見込んでいる。

400GバイトのHDDを内蔵した最上位機「DVR-HG865」
400GバイトのHDDを内蔵した最上位機「DVR-HG865」
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