米Microsoft Corp.のCorporate Vice President兼Chief XNA ArchitectのJ Allard氏
米Microsoft Corp.のCorporate Vice President兼Chief XNA ArchitectのJ Allard氏
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 米国サンフランシスコ市で開催されたゲーム開発者向け会議「Game Developers Conference」(GDC)で,米Microsoft Corp.のCorporate Vice President兼Chief XNA ArchitectのJ Allard氏(Tech-On!関連記事図1)に,次世代Xbox(開発コード名:Xenon)について聞いた。

 Microsoft社はゲーム・ソフトウエアの開発者と密接に連携していたので,Allard氏は競合メーカーよりも先に優れたソフトウエアを用意できる自信があるという。演算性能の高さや斬新なアーキテクチャを売り物にしたCellに頼ることは,ソニー・コンピュータエンタテインメントの弱さを示していると主張する。「我々がゲーム開発者から得たフィードバックによると,彼らの関心はハードウエアだけではなく,ハードウエアとソフトウエア,そしてサービスのコンビネーションにある」(同氏)。

 次世代Xbox向けゲーム・ソフトウエアの開発を他社の次世代機に比べて先行できる理由の1つは,ソフトウエア開発キットがXbox向けのものと似ていることという。さらにXenonに採用するマイクロプロセサのアーキテクチャは,Xboxに搭載した米IBM Crop.のマイクロプロセサに近いため,ソフトウエア開発者は違和感を覚えることなくXeonに向けた開発に取り組めると主張する。「既に我々は,2個の『PowerPC G5』を搭載した米Apple Computer, Inc.のパソコンに次世代XboxのOSを移植した開発プラットフォームをゲーム開発者に配っている。過去12カ月で約3000台提供した。このプラットフォームで動くソフトウエアは,Xenonの上でも動作する」。Allard氏の指摘によるとこうした芸当は,まったく新規のアーキテクチャであるCellに基づく次世代のプレイステーションにはまねできないはずだ。新しい開発プラットフォームを使って,マイクロプロセサの実力を十分引き出せるソフトウエアを開発するには,9~12カ月はかかる。

複数のCPUコアを使い分けられる


 Xenonのマイクロプロセサは,マルチプロセサ構成を採る。ゲーム・ソフトウエアを実行するために各CPUコアにそれぞれ役割を割り当てることが可能だ。「例えば,Xenonには統一のユーザー・インタフェースを用意するが,1つのCPUコアをユーザー・インタフェースの実行に利用する」。マルチプロセサ構成は,ゲーム・ソフトウエアの開発コスト削減やデータ転送量の低減にも役立つ。例えば,ゲームの実行中にユーザーが次に行う操作を予測して,1つのCPUコアを使って次の画面に表示する素材を用意しておくことが可能だという。「キャラクタが城の中にいる場合,次に城を出て森に入ることが予測できる。そこでバックグラウンドで,フラクタル技術を使って森の木を成長させておいたりできるわけだ」。

 Allard氏はXenonに採用する光ディスク媒体については言及しなかった。しかし,大容量であることにはそれほど魅力がないという。「そもそも,現在のゲーム・ソフトウエアは2層方式のDVDディスクを利用していない。同じ価格なら1枚のディスクに収まっているより,2枚構成の方が消費者心理に訴えるという側面もある。動画や音声の符号化技術が進化すれば,コンテンツのデータ量をさらに減らすことも可能だ」。青紫色半導体レーザーを使った次世代光ディスクについては,ストリーミング・データを読み出す時のパフォーマンスも気がかりという。「DVDは12倍速で読み出せるが,次世代光ディスクは誤り率がネックになるため,がんばっても4倍が限度だろう」。次世代の光ディスクを採用するとしても,製造コストを抑えられることが大前提になることも強調する。新たな製造設備が不要なHD DVDを指しているとみられる。

 Xenonの詳細は2005年5月17日~20日に米国ロサンゼルス市で開かれる「Electronic Entertainment Expo」で正式に発表する予定だ。「我々はXboxを通じてユーザーとゲーム開発者から学んだ多くの技術をXenonに投入する。Xboxの時は発売が他社の製品に遅れたが,次世代のゲーム機については各社がスタートラインに立つところだ。次の競争に向けた我々の準備は終わっている」。