NTTやFrance Telecom社は,「World Wide Spectrum Efficiency(WWiSE) Consortium」に参加した。WWiSEが米国時間の2005年3月16日に発表した。WWiSEは,次世代無線LANの規格IEEE802.11nの仕様草案を提案しているグループの1つである。他には「TGn Sync」というグループがあり,仕様草案を競っている。最近までTGn Syncが優勢だったが,今回のNTTなどのWWiSEへの参加で情勢が変わる可能性も出てきた。

 IEEE802.11nは「実効データ速度100Mビット/秒以上」を目指す無線LANの規格。2006年末前後に仕様の標準化を終えるスケジュールである。これまで,WWiSEのメンバーにはバッファローや米Airgo Networks,Inc.など無線LAN機器ベンダーや米Texas Instruments,Inc.などのチップ・メーカーが多かった。一方,TGn Syncには,松下電器産業やソニー,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.など家電メーカー大手が多い。

2大グループに収斂も情勢は混沌

 2004年末時点ではWWiSEとTGn Syncのほかに,米QUALCOMM Inc.,そして三菱電機と米Motorola社のアライアンス「MITMOT」の4グループがそれぞれ草案を提案していた。ところが,2005年1月に米QUALCOMM社がTGn Syncに加盟した(Tech-On!の関連記事)。同月に行われたIEEE802.11nのタスク・グループによる選抜投票では,MITMOTが25%以上の投票率を獲得できずに除外された。この結果,2大グループの草案だけが残った。MITMOTが消滅した三菱電機は,2005年1月にTGn Syncに合流。一方,Motorola社は2005年2月にWWiSEに参加した。

 2005年2月までの選抜投票では,TGn Syncに多くの票が集まっており,3月にも規格への採用が決まるという見方があった。しかし,2005年3月になってTGn SyncのメンバーだったフィンランドNokia Corp.が,WWiSEに参加先を急きょ乗り換えた。今回のNTTなどのWWiSEへの参加で,勢力争いの行方は再び不透明となった。草案の採用には,投票数の75%を獲得する必要があるため,決定が先にずれこむ可能性が出てきた。