QUALCOMM社のブース。MediaFLOの試作システムは別会場に設置していた
QUALCOMM社のブース。MediaFLOの試作システムは別会場に設置していた
[画像のクリックで拡大表示]
MediaFLOの操作感(チャネル選曲など)を実演するための試作機。実際にMediaFLOを受信しているわけではない。
MediaFLOの操作感(チャネル選曲など)を実演するための試作機。実際にMediaFLOを受信しているわけではない。
[画像のクリックで拡大表示]
1xEv-Doを使って映像コンテンツをストリーミング伝送した端末。MediaFLOの表示例として示していた
1xEv-Doを使って映像コンテンツをストリーミング伝送した端末。MediaFLOの表示例として示していた
[画像のクリックで拡大表示]

 米QUALCOMM,Inc.は,携帯電話機に向けた動画などを配信するサービス「MediaFLO」のシステムを試作,2005年3月14日から米ルイジアナ州ニューオリンズで開催中の「CTIA Wireless 2005」の同社の特設会場で公開した。

 QUALCOMM社がMediaFLOの伝送デモを見せるのは今回が初めてという。ただし,写真撮影は許可しなかった。「まだボード・レベルであり,見栄えが良くない。コンシューマ市場を強く意識した事業なので,試作段階での写真の露出は避けたいと考えている」(米QUALCOMM,Inc.,Vice President EngineeringのRob Chandhok氏)という。特定顧客にのみ,こっそり見せるというわけだ。QUALCOMM社は2006年10月に,全米主要都市においてMediaFLOのサービスを開始する予定で,そのための専業会社であるMediaFLO USA Inc.を設立済みである(関連記事)。現在,提携先となる携帯電話事業者との交渉を進めている。実際に動作デモを見せることで,提携先企業の拡大を目指すという。

 MediaFLOは,QUALCOMM社が「FLO(forward link only)」と呼ぶ放送型の無線技術を用いている。今回公開したのは,基地局側の伝送システムと,端末側の受信装置。700MHz帯の無線帯域を使い,変調方式にOFDM(キャリア数は4096)を使って,基地局側システムから3本のビデオ・ストリームを伝送した。データ伝送速度は平均で240kビット/秒という。今回は基地局の送信出力を0dBmと低く抑えた。このため伝送距離は,最も距離が離れたアンテナとの間でも1m程度である。

 受信装置側は,OFDM復調処理などを行うFPGAを中心としたボードと,個別部品で実現したRF受信回路を実装したボードで構成する。公開したデモでは,符号化方式にH.264を使い,QVGAで15フレーム/秒の映像をディスプレイに表示した。最大30フレーム/秒まで対応できるという。H.264の復号化処理は,QUALCOMM社の携帯電話機向けチップ「MSM6550」を使っている。QUALCOMM社は2005年末までに,受信用チップセットをサンプル出荷する予定である。同社によれば「当社内部での試作は進めている」(同社のChandhok氏)と,順調に開発が進んでいるとした。

 QUALCOMM社は北米でのサービス予定についても言及し,「当初の予定どおり,2006年10月からサービスを開始したい。サービス地域はまだ明確でないが,サンディエゴやロサンゼルスといった主要都市が外れることは無いだろう。こうした都市に,それぞれ送信アンテナを3~4本設置することでサービスを開始できる。携帯電話事業者,コンテンツ事業者などMediaFLOに参加する事業者が収益を確保するために,サービスの利用料金は月額20米ドル程度は必要だと考えている」(同社のChandhok氏)。なおQUALCOMM社はMediaFLOの無料での受信を避けるために,コンテンツを暗号化して伝送する予定。