壇上の岩田氏(写真:林 幸一郎 )
壇上の岩田氏(写真:林 幸一郎 )
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「Revolutionには,WiFiが載ります」

 3000人以上にも及ぶゲーム・デザイナーが詰めかけた会場で,任天堂取締役社長の岩田聡氏が高らかに宣言した。米国サンフランシスコ市で開催中の「Game Developers Conference(GDC) 2005」の基調講演で,岩田氏は次世代ゲーム機「Revolution」の仕様の一部を明らかにした。

 無線LANを標準搭載することには2つの狙いがあるとみられる。1つは,インターネットと接続することで,オンライン・ゲームやプレーヤ同士の通信を可能にすること。もう1つは,同じく無線LANを標準搭載する携帯型ゲーム機「Nintendo DS」と接続できるようにすることだ。

 オンライン・ゲームについては,岩田氏はNintendo DS向けに,無線LANの屋外ホット・スポットなどを利用したオンライン・ゲーム・サービスを開始することも明らかにした。さらにRevolutionが無線LAN対応となることで,任天堂が提供するプラットフォームのなかで屋内でも屋外でもオンライン・ゲーム環境を楽しめることになる。岩田氏は講演の中で,Nintendo DSが搭載する無線機能を使ったデモを見せながら,WiFi機能を加えることによる「コネクティビティ」の効果を訴えた。 

 このほか岩田氏は,Revolutionが同社のゲーム機「GAMECUBE」と上位互換性を持つことや,Revolutionが搭載するチップの開発コード名を明らかにした。米IBM Corp.が開発するマイクロプロセサは「Broadway」,米ATI社が開発するGPU(graphic processor unit)は「Hollywood」と呼ぶ。いずれも,エンターテインメントというキーワードを意識した命名だ。ちなみに,ソニー・コンピュータエンタテインメントが開発中の次世代ゲーム機には,IBM社や東芝と共同開発したマイクロプロセサ「Cell」と,米NVIDIA社が開発しているGPUが載る。米Microsoft Corp.の次世代ゲーム機は,任天堂と同じくIBM社のCPUとATI社のGPUが載る予定だ。なおRevolution以外の次世代機が,無線LAN機能を搭載するかどうかは不明である。

 同氏は講演の中で,「ゲーム機の3次元映像処理性能が向上するのに伴い,ゲーム・ソフトの開発に要するスタッフ人数や予算がうなぎ登りに高まっているのは問題である」と指摘した。Revolutionについては「Nintendo DSと同じく,低廉な開発費でゲームを作れるようにするというコンセプトを踏襲する」という。岩田氏は,学生の頃にテキスト・ベースで動く野球ゲームを開発したエピソードを紹介しながら,「ゲームにとって重要なのは,写真並に現実感のある映像ではない。現に,私の野球ゲームは友人に大受けした。選手の映像が1人も表示されていないにも関わらずだ」と語ると,会場のゲーム開発者から大きな拍手が巻き起こった。高騰する開発費に不安を抱えるゲーム開発者に,岩田氏が語った「ゲーマーの心」は確かに伝わったようだ。