図1 P2P通信でゲーム・コンテンツを共有
図1 P2P通信でゲーム・コンテンツを共有
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 米IBM Corp.は米国サンフランシスコ市で開催中の「Game Developers Conference(GDC) 2005」で,次世代のオンライン・ゲームを運営する上で必要となるシステムについて同社の取り組みを紹介した(図1,図2,図3)

 オンライン・ゲーム用システムを構築する上で,ボトルネックになり得るとIBM社が考える点の1つに通信帯域の問題がある。次世代のオンライン・ゲームでは,ゲーム中に流れるデータのトラフィックが大きくなるほか,新規のゲーム・コンテンツをネットで配布するといった用途が普及するとみられる。オンライン・ゲームを含むゲーム・ソフトのオンライン配布については,米Microsoft Corp.のXbox事業を統括するJ. Allard氏がGDCの基調講演で「ゲームの配布形態はディスクと(ネットによる)オン・デマンドの2本立てになる」と語るなど,次世代ゲーム機の標準機能となることが期待されている。だが,通信トラフィックの拡大に伴い,オンライン・ゲームの運営会社はサーバ・システムへの多大な投資を余儀なくされる可能性が高い。

 この問題の解決策の1つとしてIBM社が提案するのが,ユーザー同士のピア・ツー・ピア(P2P)通信の活用である。「ゲーム機同士がデータを共有することで,コンテンツ配布者は従来よりはるかに小規模のダウンロード・サーバを用意するだけですむ」(IBM社 Certified, Sr.ArchitectのGeorge Dolbier氏)。そうなればオンライン・ゲームへの参入障壁が下がり,市場の活性化が見込めるというわけだ。ただし,P2P通信の実効性を高めるには,HDDなどの記録媒体や,セキュリティ機能を高めたP2Pソフトをゲーム機本体に実装する必要がありそうだ。

 現状では解決しにくい問題もあるという。ユーザーがリビング・ルームで実現しているインターネット接続環境である。帯域幅や遅延時間は,オンライン・ゲーム運営会社の設備のほか,ユーザー個々の環境に大きく依存する。オンライン対戦アクション・ゲームなど応答速度が重要となるゲームでは,遅延時間が長いことは致命的となる。「例えば米国は,韓国などブロードバンド先進国と比べて接続環境が貧弱。通信会社の設備の問題などで遅延時間が長くなるため,オンライン・ゲームでできることが限られてしまう」(Dolbier氏)。

図2 このほかIBM社は,オンライン・ゲーム用システム向けに,負荷を自動的に分散して安定した動作を実現するグリッド・コンピューティング技術の利用を促している。同社は2002年より,米Butterfly.netと組んでグリッド・コンピューティング技術を応用したオンライン・ゲーム向けシステムの提供を始めた。
図2 このほかIBM社は,オンライン・ゲーム用システム向けに,負荷を自動的に分散して安定した動作を実現するグリッド・コンピューティング技術の利用を促している。同社は2002年より,米Butterfly.netと組んでグリッド・コンピューティング技術を応用したオンライン・ゲーム向けシステムの提供を始めた。
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図3 IBM社は次世代ゲーム機のゲーム開発向けに,Cellを利用したワーク・ステーションのアーキテクチャを披露した。SMP動作する2つのCellを載せた基板をラック・マウントに複数枚差す構成である。
図3 IBM社は次世代ゲーム機のゲーム開発向けに,Cellを利用したワーク・ステーションのアーキテクチャを披露した。SMP動作する2つのCellを載せた基板をラック・マウントに複数枚差す構成である。
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