米国サンフランシスコ市で開催中のゲーム開発者向け会議「Game Developers Conference」で,米Microsoft Corp.は家庭用ゲーム機「Xbox」の次世代機についてその概要を一部明らかにした(発表資料)。同社のCorporate Vice President兼Chief XNA ArchitectのJ Allard氏(図1)が基調講演で語ったもの。
Microsoft社は,次世代Xboxを2005年5月17日~20日に米国ロサンゼルス市で開かれる「Electronic Entertainment Expo」で正式に公開する予定だが,Allard氏は一部をGDCで先に公表することで,ゲーム開発者に次世代Xboxをアピールすることを狙ったようだ。
「HD時代」のプラットフォームに
同氏によれば,次世代Xboxは,HDTVとブロードバンド接続の普及を前提にした構成になる。「HD era」(HD時代)に向けた機種と位置付け,その時代に「Windowsプラットフォームはゲーム業界のさらなる成長を促す」と主張する。
次世代XboxのハードウエアについてAllard氏は,米IBM Corp.と共同開発した1TFLOPS以上の演算性能を実現可能なマルチコア構成のマイクロプロセッサやカナダATI Technologies Inc.と共同開発したグラフィックスLSIを搭載すると語るにとどめた。基調講演の時間の多くは次世代Xbox用ソフトウエアの説明に割いた。「論理的な最大演算性能を売り物にしたハードウエアを用意することと,優れたゲームを作成することは直接関係しない」(Allard氏)と,ソニー・グループと東芝がIBM社と開発した「Cell」を意識した発言もあった。
一貫したユーザー・インタフェースを提供
ゲーム市場全体を伸ばすには,現在のゲーム市場を支える中核層である若者以外にも魅力を訴えていく必要がある。そこでMicrosoft社が注目したのは,ユーザー・インタフェースの統一である。ゲーム・ソフトごとにユーザー・インタフェースが異なる現状では,頻繁にゲームをする人ならともかく,多くのユーザーが混乱すると考えた。
Microsoft社は,次世代Xboxで実行するすべてのゲームに一貫したユーザー・インタフェースを提供するための「Xbox Guide」を定めた。Xbox Guideは,ユーザーの情報や現在オンライン状態となっている友人などの情報を表示する「Gamer Card」(図2)と呼ぶ機能を備える。ユーザーがゲーム中に聞きたい音楽を選べる「Music Player」(図3)と呼ぶ機能もある。さらにユーザーに表示するメッセージのフォーマットも統一する(図4)。
今後Microsoft社がゲーム事業をどのように展開するかを示す,興味深い新機能としては「Marketplace」(図5)が挙げられよう。Marketplaceでは,ユーザーがゲームの中で使う道具(例えばゲームで利用する自動車の部品)や,データなどを販売する。このMarketplaceのためにMicrosoft社は小額決済機能を用意する。ゲーム販売者が決済のためにクレジット・カードの手数料を支払う必要はないという。クレジット・カード決済に必要な手数料が,小額のオンライン販売の普及にとって大きな壁になっていることは以前から問題になっている。次世代Xboxではユーザーは,音楽やビデオなどのメディアも購入することができると見られるので,この小額決済機能は次世代のXboxを強力なメディア配信システムに育てる際に大きな武器になると考えられている。
そして基調講演の最後---。Allard氏はゲーム開発者に感謝を込めてとして,ゲームによる抽選でなんと基調講演の参加者に合計1000台の韓国Samsung Electronics Co., Ltd.製のデジタル・テレビ受像機を配り,講演を締めくくった。