(解説)金属酸化物ナノ磁性微粒子
近年の高度情報化社会においては,情報の高密度化が求められ,強磁性微粒子を用いた超高密度記録媒体が開発されてきた。ところが,従来の磁気記録用強磁性微粒子は,直径が10nm以上もあり,TB(テラバイト)レベルへの超高密度化はその粒子の大きさのために不可能とされていた。ちなみに,現在使われている磁気記録テープ中の磁気微粒子は直径30nm程度のCoCrTaが使われることが多い。
高密度記録媒体向けでは,磁気微粒子の径は10nm以下が望ましいが,これまでは,直径10nmの超微粒子がたとえ得られても,その熱揺らぎによる超常磁性効果のために,磁気記録媒体には使えないと考えられてきた。磁気ナノ粒子を記録媒体として使うためには,
(1)キュリー温度が室温よりも十分に高い
(2)安定な単磁区構造をもち,低磁場でも磁性原子一個あたりの磁化が大きい
(3)磁気異方性エネルギーが熱エネルギーよりも大きく,室温でも高い残留時化と保磁力を持つ
という3つの条件すべてをみたすことが必要であるが,直径10nm以下の微粒子ではこれまでは上記3つの条件を全てみたす材料はみつかっていなかった。
ところが,磁気微粒子の相転移の研究をしていた横浜国立大学 教授の君嶋 義英氏(写真1)がランダム磁性体の相転移の研究過程で,偶然に金属酸化物磁性ナノ粒子を発見した(図,写真2)。このナノ磁性粒子は,遷移金属として鉄(Fe)を含んだ系であり,直径が2〜5nmという超磁性微粒子である。今のところ,上記3つの条件を全てみたした材料は,不思議なことに君嶋氏が発見した鉄(Fe)を含んだ系だけである。
君嶋氏の発見した鉄(Fe)を含んだ系による超磁性微粒子を磁気記録用原料として磁気テープや磁気ディスクに加工すれば,高密度磁気記録再生装置の超高密度記録媒体としての超高密度記録の実現が可能となる。さらに垂直磁気記録方式を採用することができれば,さらに記録密度が上がるため,テラビット/in2を超える磁気記録密度が得られると期待されている。(安立 なつ美)

【写真1】横浜国立大学 教授の君嶋 義英氏

【図】Fe酸化物ナノ微粒子の創製プロセス

【写真2】超磁性微粒子のTEM写真
















