着信メロディの配信を手掛けるドワンゴは,画像付き音声データのストリーミング配信サービス「パケットラジオ(パケラジ)」を2005年2月25日に開始した。第3世代携帯電話のパケット通信網を使う。サービス料金は,同社のWWWサイト「いろメロミックス」の会員ならば無料。同サイトの会費は315円/月である。
配信番組は,お笑い(提供元はワタナベエンターテインメント)や音楽(同ビーイング/ギザ グループなど),グラビア・タレントの紹介(同サンズエンタテイメント),スポーツ(同ドリームステージエンターテインメント)などがある。いずれも1番組の長さは3分~5分ほど。「既に1日数万人が視聴している」(ドワンゴ)という。
パケラジの狙いや収益性などを,ドワンゴと番組制作を担当するCELL,コンポジット,エンドレス・コミュニケーションズの各社に聞いた。
面白さと作りやすさを両立
——携帯電話機向けの動画配信サービスは既にある。地上デジタル放送の受信も2006年に始まるとされる。今なぜ音声中心のパケラジなのか。
小さな画面で画質も良くない動画より,きれいな静止画を使ったサービスに可能性を感じている。静止画を少し移動させたり切り替えたりしても面白い番組は十分作れる。
動画コンテンツの作成や配信には一般に高い技術が必要だが,静止画と音声のみと割り切れば専門知識を持たない人でもコンテンツを作成できる。実際,歌手の倉木麻衣さんが所属する事務所の営業担当者は,番組作成ツールを渡してたった1週間で3分間ほどの立派なコンテンツを作った。
つまりパケラジには,手軽に携帯電話機に適した面白いコンテンツを作れる素地がある。人気ブログ・サイトのように一般消費者だって作成できるかもしれない。ただ,番組製作元のすそ野をどこまで広げるかは未定だ。
話題の提供がビジネス
——着信メロディで伸び盛りのドワンゴがなぜパケラジを始めるのか。近い将来に月間利用者数を100万人にするというが,どうやって収益を上げるのか。
ドワンゴは3Dサウンドの着信メロディ(関連記事)や,咳払いの音など周囲の人には着信音と気付かれない「マナー着信音」といった新サービスで会員を増やした。これは「こんな面白い着メロあったよ。ちょっと聞いて」とユーザーに話題を提供したからだ。
パケラジでも狙いは同じ。着信メロディと同様,ユーザーが「スキマ時間」を楽しめる話題を提供する。これは確実にビジネスになる。収益モデルはまだ検討中で話せないが,番組に関係した物品販売など可能性は多い。
確かにパケラジは既存の放送局がやろうとしていることに近い面がある。しかし実際には,我々が話をすると「面白いね,一緒にやろう」と乗り気の局もある。放送局との関係は競合というより補完になるとみている。
変換しないと音が鳴らない
——着信メロディの経験はパケラジにどう生きたのか。
携帯電話機が搭載する音源LSIに応じた形式に音声データを変換する機能を,配信サーバに備えた。音源LSIはメーカー間でデータの互換性が乏しいのでこれを怠ると音が鳴らない機種が出てくる。
今後は静止画のパンやズームといった特殊効果をどのように取り入れるかを検討する。なお現在でも透過GIFを使えば1画面に3枚画像を重ねられるので特殊効果に近い見せ方もできる。