図 東芝の次期執行役社長に内定した西田厚聰氏
図 東芝の次期執行役社長に内定した西田厚聰氏
[画像のクリックで拡大表示]

 東芝は,次期執行役社長に内定した西田厚聰氏(同社取締役 執行役専務兼PC&ネットワーク社社長)の記者会見を2005年2月22日に東京都内で開いた(Tech-On!の関連記事)。西田氏は東芝で最初にパソコン事業を立ち上げ,さらに2004年には不振に陥っていた同事業のテコ入れを行うなど,パソコン関連で多くの実績を持つ。同氏が今後のパソコン事業や,AV機器などそのほかの事業についてどのような戦略と見通しを持っているのか,記者会見での質疑応答の様子を再構成して紹介する。

——パソコン事業のこれからの展開について聞きたい。

西田氏 パソコン事業では「脱コモディティ化」を重視する。この分野はコモディティ製品と非コモディティ製品のバランスをどうするかが重要だ。東芝は以前はうまくいっていたが,台湾のメーカーがコモディティ製品に参入してバランスが崩れてしまった。今後は,コモディティ製品は台湾に任せて,AVノート・パソコンの「Qosmio(コスミオ)」シリーズのような薄型ノート・パソコンで脱コモディティ化に注力する。同時に,パソコンの部品の囲い込みも手掛けていく。

——今後もノート・パソコン重視で行くのか。

西田氏 ノート・パソコンはまだまだ伸びる。日本こそノート・パソコンの比率が50%を超えたが,欧米では2008年にようやく50%以上になるという予測がある。戦いはまだ始まったばかりだと思う。

——「HD DVD」や「SED」に勝算はあると思うか。

西田氏 以前デジタルメディアネットワーク社社長もやらせていただいた経験から言って,開発コストが安いHD DVDは最も良い選択と言える。公平に見て,(Blu-rayよりも)HD DVDのほうが強いと思う。開発も順調で,2005年12月には,ノート・パソコンに組み込めるほど薄型のHD DVD装置を発表する予定だ。2006年にはそれを組み込んだパソコンを100万台売る。
 SEDは,画像がきれい,低消費電力,薄いと3拍子そろっている。こうした点は,ほかの方式と競争する上で大きな強みになる。

——海外事業の経験が長いがそこで学んだことは何か。

西田氏 海外はイラン,欧州,米国などを渡り歩いた。合わせて13年になる。そこで実感したのは,企業は,常に軽量化を続けなくては利益を生み出していけないということだ。スピードが極めて重要だということも学んだ。スピードが足りずに競争で後手に回れば,コストは2倍になってしまう。
 言葉が大切という点も学んだ。欧米ではまず何事も言葉で表現し,論理で相手を説得することが求められる。ウソをつかない,正直であるというのも重要だ。ただし,欧米では各人が強い宗教的価値観を持っていて,個人の価値観に一歩踏み込むと途端に「余計なお世話」と言われる。日本では,欧米と違ってすべてが言葉で決まるわけではない。公私の区別も欧米ほど明確でない。そうした違いはあるが,人間,合理的な部分と非合理な部分を両方持っているという点では共通している。

——現執行役社長の岡村氏をどう評価するか。

西田氏 岡村氏は東芝という会社の枠組みを再構築し,今後進むべき方向性を明確にしてくれた。また,社内や社外のコミュニケーションの重要さを強調し,率先して実行されたと思う。

——今後,東芝をどのような会社にしたいか。目指すべきモデルとなるような企業はあるか。

西田氏 モデルとなるような企業は特にないが,グローバル化が重要だと思っている。今のように急速に市場がグローバル化している時代は,日本だけでなく世界で戦えることを前提にしなければならない。柱となるデジタル・プロダクト,電子デバイス,社会インフラの3分野でグローバルな競争力を強化していく。