日本電産は,米国カリフォルニア時間で2005年2月15日,日本ビクターとその子会社JVC Components (Thailand) Co., Ltd.およびこれらの販売代理店であるアジリスとAgilis Technology Inc.(以下,合わせて「ビクター側」とする)に対して,米国特許第5667309号,第6554476号,第6343877号,第6793394号の侵害を理由とする特許侵害訴訟を,米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提起した(発表資料:PDF)

 これらの特許は,ハード・ディスク装置(HDD)用スピンドル・モータに使われる流体動圧軸受(FDB)技術に関するもの。日本電産は,2004年2月,子会社である三協精機製作所から,これらの特許を含め,FDB事業を譲り受けた。日本電産は,ビクター側が現在も本特許に関するライセンスを受けることなくスピンドル・モータをHDDメーカーに供給し続けていることから,特許を侵害していると同社が考えるモータについて,米国内における販売,流通および輸入の差し止めを求めて,今回の提訴に踏み切ったとしている。日本電産は,ビクター側の侵害行為に対する通常の損害賠償とともに,ビクター側の故意侵害に対して米国特許法で認められている3倍賠償および弁護士費用の賠償を求めている。

 日本電産が米国での係争を選んだのは,米国の特許法の性格が主な理由だ。特許権には,その効力が取得した国の領域内に限られるという「属地主義」の考え方があり,日本の特許法もこれを採用している。これに対して,米国特許法では,米国内で起きた侵害だけにとどまらず,特許権を侵害する製品が他国から輸入された場合に,他国での製造を差し止めることができる。「侵害を受けた特許の多くが米国のものだったこともあるが,今回のように,タイで製造して世界中へ出荷しているようなメーカーを相手取るときには,米国特許に基づく係争を選ぶのが効果的と判断した」(日本電産広報)という。日本電産は,米国のHDDメーカーの装置に同社の特許を侵害するJVC社製モータが搭載されていることを確認し,米国での訴訟を提起した。

 日本ビクターは,今回の提訴について,「以前より,日本電産から特許を侵害しているとの指摘は受けていた。それに対して,当社は侵害の事実はないと判断し,その旨を日本電産に伝えた。今後のことは,訴状を見てから検討する」(同社広報)としている。ビクターはタイ工場(JVC Components社)において,HDD用流体軸受モータを300万台/月の規模で生産している。2005年2月3日に発表した第3四半期の決算短信の中でも,その好調に触れており(Tech-On!関連記事),第4四半期はさらに事業を拡大すると表明したばかりだった。


《追加のお知らせ》
※本記事は,2005年2月16日に掲載したものですが,翌17日に補足説明として,日本電産が米国での係争を選んだ理由を追記しました。