立命館アジア太平洋大学と社会経済生産性本部・技術経営研究センターが,アジア企業に関する研究報告会を共催
立命館アジア太平洋大学と社会経済生産性本部・技術経営研究センターが,アジア企業に関する研究報告会を共催
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 立命館アジア太平洋大学(APU)の研究グループによる「中国・アジア先進企業のR&Dマネジメント」の調査報告会が,2005年2月11日に開催された。同大学の研究グループは,アジア諸国で活動する企業などの動向を調査しており,今回は中間報告となる。報告会を主催したのは,同大学と社会経済生産性本部・技術経営研究センター(TiM JAPAN)である。
 
 今回の報告会で話題の中心になったのは,半導体やパネル事業だけでなく大画面テレビや携帯電話事業などで台頭が著しい韓国Samsung Electronics Co., Ltd.だった。APU教授の福谷正信氏は「現在のSamsung社には,欧米企業に追いつこうと躍起になっていた70年代の日本企業と同じようなエネルギーを感じる」として,生産技術だけでなく,研究開発力も蓄えつつあるのではないかと指摘した。Samsung社の携帯電話事業をケース・スタディとして取り上げた伊藤泰敬氏は,300人以上のデザイナーを擁する「デザイン経営センター」が,通話品質などと並んで同社の携帯電話事業を伸ばしている強さの源泉の1つだとした。

 同じくAPU教授の難波正憲氏は,中国における企業の研究開発活動を分析した。同氏は各企業の研究開発を,開発済みの技術を中国仕様に合わせる「第1世代」,中国市場の需要に合わせて開発する「第2世代」,世界市場向けの技術や製品を中国で開発する「第3世代」に分類した。この分類では多くの日本企業が1.5世代にとどまっているのに対して,米Motorola, Inc.や米General Electric Co.(GE)などは,既に第3世代の活動をしているとした。

 さらにAPUのグループは,米Lucent Technologies Inc.の中国における活動や,要素技術から機器までの垂直統合モデルで好業績を挙げているシャープの液晶事業をケース・スタディとして報告した。

 午前中には,サムスン電子の常務を務めた東京大学 大学院 経済学研究科の特任教授である吉川良三氏が,自らの体験を振り返りつつ韓国国民の思考を分析するなどしてSamsung社の強さの源泉を解説した。

 同氏の考えでは,同国民の気質が半導体やパネルなどの投資型ビジネスに向いているという。さらに,価格やデザインなど顧客から見える部分に力を入れる傾向があり,生産性の向上など顧客に見えない競争力は重視されないと分析する。必要な要素技術は自ら開発するよりも提携などで手に入れることが多いため,研究開発に関しては今後も台頭することはないだろうとみている。

 ただし,BRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)市場といった新興の価格重視の地域ではSamsungブランドの製品が浸透し始めており,高品質志向の日本メーカーがこれらの地域で出遅れる恐れがあると指摘した。