市場調査会社の英Informa Group PLCは,携帯電話機向けのコンテンツ配信で,2009年には携帯電話機のユーザ自身が重要な販売チャネルになるとの予測を発表した。同社の報告書「Emerging Business Models for Mobile Content」によれば,2009年までに携帯電話機向けのコンテンツ市場は507.3億米ドルに拡大する。この頃には,コンテンツ配信チャネルとして携帯電話事業者の役割が低下する一方で,著作権保護技術を組み込んだピア・ツー・ピア(P2P)型のシステムを用いたユーザ間のチャネルが重要になるという。

 最近,米SNOCAP Inc.や米Shared Media Licensing, Inc.などの技術を使ったサービスを皮切りに,大手のレコード会社がP2Pシステムによる音楽配信を認めつつある(日経エレクトロニクス関連記事)。こうした動きの中で,配信先の端末として,いつも人が持ち運び他者との通信に使っている携帯電話機が注目を集めている。例えば,ある携帯電話機のユーザがお気に入りのコンテンツ見つけたら,すぐに知り合いに紹介するといった,口コミによる配信が今後登場すると見られる。コンテンツを薦められたユーザがそれを購入したら,紹介したユーザに手数料を渡すアイデアもある。Informa社は,携帯電話機向けP2Pシステムを2種類に分類している。一つはユーザの携帯電話機から直接別のユーザの端末にコンテンツを転送するもの。もう一つはユーザが送信するメッセージの中にコンテンツへのリンクを埋め込むものである。

 なお,来る3月29日から米国最高裁判所でP2P型のファイル共有システム技術に関連する「MGM対Grokster」訴訟の弁論が始まる予定である。Informa社によれば,携帯電話事業者が採用するP2Pシステムは最初から著作権保護技術を組み込む見込みなので,この訴訟でどちら側が勝っても,同社の予測に影響はないという。