開発したICのチップ写真。送信回路は右下の領域。
開発したICのチップ写真。送信回路は右下の領域。
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米Texas Instruments Inc.は,GSM方式の携帯電話機の送受信機能を,1チップのCMOS ICに集積する技術を開発,「ISSCC 2005」でその要素技術を発表した(講演番号 17.5)。同社が2005年1月に発表した,無線機能を統合した1チップのCMOS ICに関する要素技術である。同社がDRP(digital radio processor)と名付けている技術で,昨年のISSCC 2004ではBluetooth用ICにDRPを適用した内容を発表していた。今回の携帯電話機向けチップは,TI社のDRP製品としては第2世代に相当する。

 TI社はISSCC 2004において,離散時間アナログ信号処理技術を使った受信回路について発表していた。この受信回路は,多段構成のスイッチト・キャパシタで直接標本化(ダイレクト・サンプリング)することで周波数変換するというもの。今回の発表では,GSM/EDGE方式向けの送信回路について発表した。デジタル方式のPLLの実現技術と,ポーラー変調に関するものである。昨年発表したBluetooth向けICでは130nmのCMOS技術を使っていたが,今回は90nmのCMOS技術を使う。

 デジタル方式のPLLは,1.6GHz~2GHzのDCO(digitally controlled oscillator)とTDC(time to digital convertor)などで構成する。外付けのアナログ部品の利用を減らすコンセプトの回路である。ポーラー変調はGSMとEDGEで利用する送信回路のパワー・アンプを簡略化するために採用した。「90nmのプロセスを使ったCMOS製の送信回路で,ポーラー変調を組み込んだのは今回が初めて」(TI社)としている。今回発表した送信回路の消費電流は,送信出力が6dBmのときに42mA(電源電圧は1.2V)という。

 TI社の発表者によれば「GSM方式の携帯電話機向けのDRP対応ICは,フィンランドNokia社と共同開発してきた。そのため同社がいち早く採用を決めた」という。講演では参加者から「W-CDMAやUMTS向けの1チップのCMOS ICの開発を進めているか」という質問があったが,同発表者は「現在開発中である」とだけ述べた。