関西地区の民放5社(毎日放送,朝日放送,関西テレビ,讀賣テレビ,テレビ大阪)が,「著作権を侵害する」として,マンション業者向けにテレビ番組の録画システムを販売するクロムサイズを訴えた。民放側は,著作権法が定める「複製権(第21条と第98条)」「送信可能化権(第99条の2)」「公衆送信権(第23条)」を侵害するものだとして,クロムサイズに対して同システムの販売中止を求めている。

 5社が問題視したのは,クロムサイズが販売する録画システム「選撮見録(よりどりみどり)」。同システムの中核になるのは,5チャンネルのテレビ番組を1週間分,同時録画できるサーバである。このサーバは,マンションの各戸に置かれた端末とLANでつながれており,住民は個別に番組単位で予約・録画できる。複数のチャンネルあるいは全チャンネルのテレビ番組を同時に予約・録画することもできるという。各戸の端末は,住民自身が保有するテレビ受像機とつなぐ。民放側の説明によると,最大50戸まで対応できるという。

 このシステムは,伊藤忠ケーブルシステムが,マンション向け設備として販売する準備を進めていた(伊藤忠ケーブルシステムは,今回の訴えを受け,裁判所の判断が下るまで販売に向けた活動を見合わせるとしている)。伊藤忠ケーブルシステムのWWWサイトを見ると,共通のキャプチャー・サーバがいったん全テレビ番組を録画し,所有者ごとに用意したハード・ディスク装置(HDD)にコピーする形態を採る。キャプチャー・サーバと各部屋のセットトップ・ボックス(STB)はLAN経由で接続する。この仕組みにより,各戸向けに用意したHDDの録画内容は,別の住民からは見ることができないようになっている。各戸のHDDにコピーした時点で,キャプチャー・サーバの録画情報は消去するという。
 
 クロムサイズ側は「現時点では裁判所から訴状を受け取っていないのでコメントできない」としているが,同社のWWWサイト上では「著作権を侵害するものではない」と反論している。民放側は「交渉経緯から自主的な販売中止が期待できなかった」としているが,クロムサイドは,民放5社に対して話し合う場を作りたいと申し入れたが,実現しなかったと主張している。