総務省は2005年1月19日,電波法施行令の改正案を公開し,5GHz帯無線アクセス・システムの一部の周波数帯を使う無線局に電波利用料を課すことについて意見募集を開始した(発表資料)。意見は,2005年2月18日まで受け付ける。同改正案は手続きが順調なら2005年5月に施行される。同月に計616MHz分に周波数帯域が拡大する5GHz帯無線アクセス・システムの中で,一部の周波数帯を使う機器だけに電波利用料がかかることになる。

 改正案は,4.9GHz~5.0GHzの周波数帯(以下,4.9GHz帯)を利用する無線通信サービスの無線基地局と無線端末にそれぞれ,570円と20円を電波利用料として課すもの。「これらの料金は,実際には基地局はもちろん,端末の分も,4.9GHz帯を使って通信サービスを提供する通信事業者が支払う格好になる」(総務省電波政策課)。

前の利用者の「早期立ち退き料」

 4.9GHz帯は従来,「固定マイクロ波通信システム」と呼ぶ名で通信事業者が無線の中継回線として利用していた。総務省はこの周波数帯を無線アクセス・システムに開放するため,2002年9月に4.9GHz帯の同システムの利用を2007年末以後は認めないことを決定。さらに2004年7月,総務省は首都圏,名古屋圏,近畿の18都道府県に関して固定マイクロ波通信システムの使用期限を2005年11月30日とした。固定マイクロ波通信システム側にとっては本来の使用期限よりも早く移行を進めなくてはならなくなった。

 総務省はこうした決定と並行して,2004年5月に周波数の新規利用者から電波利用料を徴収し,それを従来の利用者に「給付金」という名目で支払う早期立ち退き料の半分に充てることを規定した法律「電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律」を施行させた。今回の電波利用料の案もこの法律に沿ったものである。料金の算定は,通信事業者に支払う給付金が計5億5600万円,一方5GHz帯無線アクセス・サービスの基地局が今後10年間に20万台,端末数が約580万台になるという市場予測を根拠にしている。

「捕らぬ狸の皮算用」になる可能性も

 今回の改正案がそのまま通れば,疑問が1つ出てくる。果たして通信事業者が4.9GHz帯をあえて使うか,という疑問である。というのも,同システム用の周波数帯は2005年5月に大幅に増えるため,4.9GHz帯を避けても当面はサービスが成り立つからだ。同システム用の周波数帯は現行では4.9GHz帯と5.03GHz~5.091GHz,5.15GHz~5.25GHzの計261MHz分(屋外で利用可能なのは161MHz分)である。これが5月には,355MHz分増えて616MHz分となる(同416MHz分)。4.9GHz帯は全体の1/4~1/6に過ぎない。機器を4.9GHz帯を使えるように設定して販売すると追加の電波利用料が必要だが,使わなければ払う必要がない。ユーザーの少ないうちからこうした負担をあえてかぶる通信事業者がいるかどうか。仮に,こぞって4.9GHz帯の利用を避けることになれば,総務省は立ち退き料の財源のあてが大きく外れることになる。