図1 Samsung社が2004年12月末から販売を始めた「BD-R1000」。価格は300万ウォン(日本円で約30万円)。
図1 Samsung社が2004年12月末から販売を始めた「BD-R1000」。価格は300万ウォン(日本円で約30万円)。
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 「我々の録画機を分解してみませんか?」——「2005 International CES」で韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のブースを訪れた記者に思わぬ申し入れがあった。Samsung社が開発した,同社初のBlu-ray Disc録画機「BD-R1000」を自ら分解して見せてくれるという(図1,図2)。当サイトではこれまで松下電器産業のBlu-ray Disc録画機「DMR-E700BD」を分解してもらい報告したことがあったが(Tech-On!関連記事,前編後編),こうした記事をSamsung社の技術者の方々に以前に見てもらっていたことも今回のきっかけになったようだ。

 Samsung社はBD-R1000を2004年12月末から販売を始めたばかり。韓国市場向けの製品で,価格はちょうど300万ウォン(日本円で約30万円)という。ATSCおよびNTSCチューナを備えており,HDTV放送のMPEG-2 TS(トランスポート・ストリーム)を書き換え可能な片面単層Blu-ray Disc媒体に2時間録画できる(片面2層媒体には非対応)。DVDおよびCD媒体の再生も可能である。HDDは搭載していない。

初のBD/DVD/CD一体型光ヘッド搭載機

 Blu-ray Disc録画機は既にソニー,松下電器,韓国LG Electronics Inc.,シャープが製品化しており,同録画機を発売するメーカーとしては5社目になる。ただし,Blu-ray DiscおよびDVD/CD用の光学系を1つにまとめた2レンズ構成の光ヘッドを開発,搭載したメーカーとしては初めてだ。韓国の製品ということもあり,そう簡単には入手できるものではないため,早速分解をお願いした。

 Samsung社はCESに3台のBD-R1000を持ち込んだ。このうち分解してもらったのは米Zoran Corp.のブースに展示してあったものである。なぜZoran社のブースに置いてあったのかといえば,それはBDR-1000に同社製のLSIが使われているからである。Zoran社のブースの比較的広いスペースに録画機の筐体を移し,Samsung社の技術者が慣れた手つきで筐体上面と側面にあるネジを緩めていく。

 筐体上面のカバーを取り外していきなり目に飛び込んできたのは,かなりスッキリとした内部の風景である。録画機は基本的にデジタル信号処理回路基板と,電源回路基板,記録再生装置の3つの部分から成る。それらすべてに,上面カバーを外すだけでアクセスできるシンプルさだ。具体的には筐体内の左側に電源回路基板,その右隣に記録再生装置が配置されており,同装置を覆うような形で上部にデジタル信号処理回路基板が固定されている(図3)。記録再生装置の右側には何もない。電源回路にはトランスが2つあり,1つは電源がオフのいわゆるスタンバイ時の電源供給用,もう1つは動作時の電源供給用という。

バックエンドは他社製LSIを多用

 次にデジタル信号処理回路基板を取り外して裏返すと,LSIやチューナ,受動部品,AV端子などがギッシリと並んだ実装面が姿を現した(図4)。映像/オーディオなどのデジタル信号処理を担う主要なバックエンドLSIは4つある。(1)HDTV対応のMPEG-2復号化LSI,(2)DVD再生時などに利用するMPEG-2復号化LSI,(3)アナログ放送録画用のMPEG-2符号化LSI,(4)MPEG-2 TSをBlu-ray Discの録画フォーマットに変換するLSI,である。

 バックエンドLSIについては今回,他社製LSIを多用したという。具体的には上記の(1)は前述のZoran社製,(2)は米LSI Logic Corp.製,(3)はNEC製である。ただし,(4)は他社から供給を受けにくいため自社開発した。ちなみにSamsung社の十八番であるDRAMは今回11個使っているが,すべて自社製だった。(後編に続く)

図2 BD-R1000の背面。
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図3 筐体上面のカバーを取り外したところ。
図3 筐体上面のカバーを取り外したところ。
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図4 デジタル信号処理回路基板。
図4 デジタル信号処理回路基板。
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