文化庁が2006年~2008年をメドに実現を目指す,著作権法の抜本的な改正に向けた検討項目がまとまった。文化庁の諮問機関である文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会が「著作権法に関する今後の検討課題」と題する報告を2005年1月17日にまとめた。主にハード・ディスク装置(HDD)やパソコンを用いた音楽の録画,デジタル放送やブロードバンド配信の本格化など,コンテンツのデジタル化を踏まえたものである。
今回の報告は,法制問題小委員会の上位組織である文化審議会 著作権分科会での承認を経て,2005年1月末にも正式決定される見込み。文化庁はこの報告を基に,2005年2月下旬以降,著作権法の改正案を順次検討する。改正に向けた議論が順調に進んだ課題については,早ければ2006年1月からの通常国会に著作権法改正案を提出し,2006年度の施行を目指す。
報告では現在の著作権法が抱える課題として16項目を指摘している。これらの課題は「検討の対象とすることが適当であると考えられる課題」としている。今後の法制問題小委員会などで,著作権法改正をすべきか否か,改正する場合どのように改正するかを議論することになる。
例えば「私的録音録画補償金の見直し」では,HDD内蔵型オーディオ・プレーヤ,パソコンに内蔵されたHDDやCD-R/RW装置を私的録音補償金の対象として追加することを検討する。さらに根本的な課題として,現在は補償金の対象となる機器を個別に政令で追加しているが,こうした法令による指定を経ずに対象機器を決められるような仕組みを検討する。データのキャッシュやバックアップ,サーバやパソコンの内部における一時的な保存などについては,著作権者の権利の制限を拡大することを検討する。
今回の報告では16項目の課題に加え,著作権法改正に関する利害関係者の取り扱いについて言及している。従来は,利害関係者同士の対立がある課題については,法制問題小委員会などでの議論に着手できない状況があった。これについて報告では「検討自体を一律に控えることは合理的ではない」と指摘している。
今後はこうした対立のある課題も,法制問題小委員会など議題として積極的に採り上げていく。その上で,利害関係者の意見については,(1)参考情報として資料配布する,(2)法制問題小委員会などの場に招致して意見を聞く,(3)パブリック・コメントを募集する——といった形で反映させる方針である。
●「著作権法に関する今後の検討課題」が言及する16項目の課題
- 基本問題
- 私的録音録画補償金の見直し
- 権利制限の見直し
- 私的使用目的の複製の見直し
- 共有著作権に関わる制度の整備
- 著作物の「利用権」に関わる制度の整備
- 保護期間の見直し
- 政令などへの委任
- 表現・用語の整理など
- デジタル対応
- デジタル化時代に対応した権利制限の見直し
- 技術的保護手段の規定の見直し
- 放送新条約(検討中)に関わる制度の整備
- 契約・利用
- ライセンシーの保護
- 契約規定全般の見直し
- 登録制度の見直し
- 司法救済
- 間接侵害
- 損害賠償・不当利得など