エフエービジョンは2004年12月28日,同社の「録画ネット」に対して下されたサービス停止の仮処分取り消しを求めて,東京地方裁判所に保全異議を申し立てた(エフエービジョンの申立書)。録画ネットは,海外居住者向けのテレビ番組録画代行サービス。ユーザーのパソコンをエフエービジョンが管理し,ユーザーが海外からインターネット経由でパソコンを操作する形態を採っていた。

 同サービスに対して,NHKと在京民放5社(日本テレビ放送網,東京放送,フジテレビジョン,テレビ朝日,テレビ東京)は2004年7月下旬,「テレビ局が保有する著作隣接権を侵害するものだ」としてサービスの停止を求める仮処分申請を行っていた(関連記事1)。著作隣接権は,放送事業者や実演者などを保護するための権利で,録画権や放送権などを含んでいる。

 テレビ局の申請に対して東京地裁は同年10月7日,テレビ局の申請を認める形でサービス停止の仮処分を下した(関連記事2)。争点になったのは「複製(録画)行為の主体者が誰か」という点だった。テレビ局側は「複製行為の主体がエフエービジョンにある」としてサービスの停止を求めたが,エフエービジョン側は「ユーザーが私的な複製行為を行っているにすぎない。エフエービジョンは,その支援を行っているだけ」と主張していた。

 今回の異議申し立ては,この10月の決定に対して起こしたものである。エフエービジョン側は,納得できない理由を2つ挙げている。まず,「東京地裁の決定では,機器類のインターネットへの接続形態など録画行為とは無縁の内容を列記し,それが複製行為の管理・支配に関わるとしている」点が事実誤認であるとしている。さらに「表現の自由」を侵害するものだとし,仮処分の取り消しを求めている。