福岡県の産官学が連携し,ナノテクノロジーに関する福岡発の技術開発や産業創出を目指している「福岡ナノテク推進会議」は,平成15年度独自のプロジェクトとして,C60フラーレンやカーボンナノチューブ(CNT)の用途開発事業を始める。事務局の福岡県 商工部 新産業・技術振興課 課長技術補佐の倉田 奈津子 氏(写真)が本誌のインタビューに対して明らかにした。

 福岡ナノテク推進会議は2002年7月25日に設立し,当初172機関の加入であったが,2003年9月25日時点で241機関(138社,14大学83研究室,11公的機関・団体,9行政機関)にまで発展している。福岡県,福岡市,北九州市,飯塚市,直方市,大牟田市からの出資でまかなっており,会費は無料。平成15年度は,事業に対する政府からの補助金約3560万円を含め,約1億7460万円規模の予算を組んでいる。

 平成15年度事業の中で,特徴的なのはナノテク産業を促進するための福岡県独自のプロジェクト「ナノテク産業化促進事業」を設けている点。3000万円の予算を,(1)実用化のためのプロジェクト2件(1500万円),(2)産業化の可能性を探り政府プロジェクトへの提案を目指すプロジェクト4件(500万円),(3)カーボン・フラーレン応用製品開発プロジェクト“フラーレンチャレンジ21”(1000万円)---に使う。

 フラーレンチャレンジ21は,フロンティアカーボンが北九州市で生産しているカーボン・フラーレンの応用製品開発を目指すもの。すでに,福岡ナノテク推進会議は,フロンティアカーボンが販売している混合フラーレン(C60が60%,C70が25%,高次フラーレンが15%)「nanom mix」のサンプル品を,用途開発を目指す会員8社に無償で提供済み。さらに,このプロジェクトでは実際の応用製品開発としての助成金を支給する。

 助成金の採択テーマは福岡ナノテク推進会議企画運営委員会で決定し,2003年10月に公表する予定。なお,採択した用途開発事業の成果の帰属は,フロンティアカーボンと個別に協議する必要がある。

 さらに福岡ナノテク推進会議では,福岡県の予算で財団法人 飯塚研究開発機構と大牟田市地域活性化センターが実施する新産業創造等育成基金研究開発事業(研究開発)および(研究テーマ探索)において,CNTの用途開発を提案する。採択された場合は福岡ナノテク推進会議の平成15年度予算とは別枠の事業となる。これは,OHC大牟田が瞬爆法で廃タイヤからCNTの生産を計画しており,工場を大牟田市に設置したことを受けてのもの。採択されれば,フラーレンチャレンジ21と同様なプロジェクトとなる予定。

 福岡ナノテク推進会議事務局への問い合わせ先は,電話(092)643-3434,fax(092)643-3436,電子メールinfo@nano-fukuoka.jp。(神保 進一)

【写真】福岡県 商工部 新産業・技術振興課 課長技術補佐の倉田 奈津子 氏
【写真】福岡県 商工部 新産業・技術振興課 課長技術補佐の倉田 奈津子 氏