舞台上にあたかも人物や物体が実在するかのように見える「空中ディスプレー」を利用した劇場「DMM VR THEATER」が、2015年9月11日に神奈川県横浜市にオープンする(図1)注1)。第1弾の公演コンテンツは、X JAPANのギタリストで、ソロアーティストの「hide」(故人)のライブパフォーマンス。オープンに先立ち、報道機関向けに完成した劇場を披露した。

注1)Zeppホールネットワークや相鉄エージェンシー、ローソンHMVエンタテイメント、ワイドワイヤワークス(現・DMM.futureworks)の4社によって組成されたシアターVR有限責任事業組合が設立・運営している。施設の開発を相鉄アーバンクリエイツが担った。DMM.comがネーミングライツを取得した。

図1 空中ディスプレーを利用
2015年9月にオープンする劇場「DMM VR THEATER」には、仮想的な人物や物体があたかも舞台上に実在するかのように見える「空中ディスプレー」がある。座席数は385である。

 今回、「ペッパーゴースト」と呼ばれる方法によって、空中ディスプレーを実現した。舞台の端(手前側)から観客席側に向けて斜めに傾けて張った半透明の光学フィルムにより、床に表示した人物などの映像を反射させることで、舞台上に人物などが実在するかのように虚像を見せるもの(図2)。舞台の後方にもスクリーンを設置し、プロジェクターで映像を投影する。この映像に対して、床に表示した映像の虚像が手前側に見えることを利用して、虚像をより立体的、かつリアルに見せる。

 例えば、虚像の影に相当する映像を、舞台の後ろ側のスクリーンに投影する。光学フィルム上の虚像が変化すれば、それに伴って影の映像も変化する。こうした演出を行う。

図2 光学フィルムとLEDディスプレーを利用
空中ディスプレーでは、舞台から観客席側に向けて斜めに傾けて張った半透明の光学フィルムを利用して虚像を見せている。大型のLEDディスプレーを舞台手前の床に配置し、LEDディスプレーの映像を光学フィルムに反射させている。舞台の後方にもスクリーンを設置して映像を投影する。

高精細LEDディスプレーを利用


 今回、舞台上の虚像を明るく鮮明にするために、大型の高精細LEDディスプレーを床に設置した。

 LEDディスプレーは、米SiliconCore Technologies社製。画素数は、横3840、縦1440である。赤色(R)と緑色(G)、青色(B)のLEDチップを1つのSMD(surface mount device)パッケージに封止したLEDを、画素数分だけ利用している。2000cd/m2という、LEDディスプレーとしては高い輝度を実現しながら、LEDの配置間隔(ピッチ)は1.9mmと狭いことが特徴である。「この輝度で、1mm台の狭ピッチで配置できるのは我々だけ」(同社)と胸を張る。

 ピッチが狭いので、LEDの“粒子感”は感じにくくなる。2000cd/m2以上の高い輝度を実現する場合、現在、一般的にピッチは3mm以上である。