タカタ問題の異常さは、リコールの規模だけではない。リコール対応の前面に、部品メーカーが立たされていることだ。今や自動車メーカーが単独で、リコールに対処しにくくなっている。責任範囲を明確にし、システム全体を見据えた技術開発に挑まねばならない。

 米GM社が2015年5月、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に届けたブレーキのリコールが、自動車部品メーカーに大きな波紋を呼んでいる。リコールの届出書に、部品メーカーの名前が記載されていたからだ(図1)。一部の重大なリコールでは、こうした記載が過去になかったわけではない。そのこと自体よりも部品メーカーが驚愕したのは、GM社の取り組みを契機に、リコールに際して他の自動車メーカーも続々と部品メーカーを明かし始めたことだ。

図1 リコールで部品メーカーの名前が公表される
(a)2015年5月、GM社は「Chevrolet Colorado」に搭載するブレーキのリコール届出書に、曙ブレーキ工業の名を記した。(b)これを受けて、曙ブレーキは自らも公表。NHTSAの方針転換に素早く対応した。曙ブレーキは「GM社から公表する旨の連絡があった。その連絡を受けて、当社の方針に則って公開した」と説明する。
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 GM社は今回の措置について、「NHTSAからの要請を受けて、部品メーカーを記した」と説明する。NHTSAは本誌に対し、「安全機能に関わるリコールでは、原則として部品メーカーを公表する方針」に転じたことを明かした。

 これまで、リコールするか否かの判断を下し、当局や消費者に対応する責任は自動車メーカーがすべて担ってきた(図2)。例えば2014年のGM社による、走行中にキーホルダーの重さでイグニッションスイッチがオフになるという大規模リコール。部品メーカーの存在は取り沙汰されたが、前面に立ったのは自動車メーカーである。

図2 部品メーカーに責任がのしかかる
(a)従来は、完成車メーカーがほとんどすべて対応していた。(b)今後は、部品メーカーが当局や消費者に説明することが求められる。
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 リコール時の部品メーカーの役割は、「自動車メーカーへの説明と対策品の供給にとどまる」(日系部品メーカーの社長)のが“常識”だった。

 今後、そんな考えは通用しなくなる。リコール時に自動車メーカーの説明が足りないとみなされると、即座に部品メーカーに矛先が向かうことになる。