電気自動車(EV)をワイヤレスで充電できる無線給電システムを普及させるには、他の無線機器に影響を及ぼさない共存技術やメーカーを問わずに使える相互接続性(インターオペラビリティー)などの確立が重要になる。これらの技術の標準化動向についてUL Japanが解説する。(本誌)

 世界的に厳しくなる燃費規制に対応するため、自動車メーカー各社はEVなどの電動車両の実用化を加速させている。このうち現在市販されているEVは、急速充電器などにケーブルを接続して充電しているが、充電ケーブルの中には重たいものもあり、女性や高齢者は作業しづらいなどの問題がある。屋外に充電設備が設置されていると、悪天候の時や夜中に作業を行わなければならないこともある。

 このようなEVの課題を解決する手段として、ケーブルを使わずにワイヤレスで充電する「無線給電技術」の実用化に向けた動きが加速している。同技術は金属接点やコネクターを介さずに電力を供給するものであり、これまでコードレス電話などの小電力機器(伝送電力50W以下)で使われている。これに対してEV用の無線給電技術は、伝送電力がkW単位と従来技術に比べてはるかに大きいため、漏れ電磁界が他の無線機器や人体に影響を及ぼす恐れ がある。

 こうした状況を受けて現在、国内外において、EV用無線給電装置と既存の無線機器との共存方法や人体に影響を与えない技術の標準化作業が進んでいる。本稿では、EV用無線給電技術の国内外における標準化作業の最新動向や、標準化に向けてUL Japanなどが実施した漏れ電磁界測定の実証実験の結果などを紹介する。