「ハゲタカ」「るろうに剣心」といった作品で知られる映画監督の大友啓史氏に、映像機器の将来への期待や展望を聞いた。さまざまな画面の普及が多彩な映像体験を生むことに期待しつつ、その分映像作家には独自の視点が求められると説く。技術者は、自らの哲学に準じて、製品やサービスで何ができるのかを使い手側に提示すべきだと主張する。
──2020年に向けたテレビの大画面化や高精細化の進展は、映像の作り手側からは歓迎すべき動きでしょうか。
2つあると思っていて、1つは圧倒的にウェルカムなんですね。そもそも僕がテレビをやめて映画をメーンに活動しているのは、普通の(テレビの)視聴環境だと、自分の作ったものが視聴者にそのまま伝わらないことが、大きかった。例えば、音は圧縮されますし、映像もそれぞれの家で画質が全然変わるし、画面が小さいとこちらが隅々まで作り込んでいるディテールが伝わらない。テレビをやっていた時代の最大の枷(かせ)は、どういう環境で見られているか分からないことでした。画面のサイズは多種多様で、メーカーによって色も全然違うし、音環境も全く違うじゃないですか。