2015年6月、技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)が金属3Dプリンターなどの開発に関する中間成果を公表した。実に9台もの試作機を造り上げていたことが明らかになった。
TRAFAM:
金属造形で世界最先端を狙う
造形装置だけではない。同機構は造形材料、製品・部品設計の在り方までを視野に入れているのが特徴だ(図1)。「金属の3Dプリンティングでドイツよりも先に行くには、この『設計』『材料』『造形装置』の3本の矢を束ねていくしかない」(TRAFAM「次世代型産業用3Dプリンタ技術開発プロジェクト」のプロジェクトリーダーで近畿大学工学部教授の京極秀樹氏)という考えに基づいている。
実際、金属での3Dプリンティングでは、材料の粒径の分布や平均値、形状などが造形結果に大きく影響する。そこでTRAFAMには、研究機関や装置メーカーだけではなく、材料メーカーも参画している(図2)。さらに実地での評価や用途開発のために、多数のユーザーが参加している。
これらのメンバーで目指しているのが、良質な造形品を得るための現象の解明と条件の洗い出しに加えて、高速化と大型化である。巨大な造形槽で多数の造形物を一度に作製すれば、大量生産にも対応可能になるからだ(図3)。造形槽に多くの異なった形状の造形物を並べれば、一品生産品を同時に多数造れる。
TRAFAMの最終目標として、金属3Dプリンターについては2018年度末、鋳造のための砂型造形用3Dプリンターについては2017年度末に、それぞれどのような仕様の造形装置を実現するかが決まっている(表1)。装置の価格は金属3Dプリンターで5000万円以下、砂型造形用プリンターで2000万円以下に抑える。目指しているのは、中小企業でも導入可能なコストパフォーマンスを備えた機械の開発だ。
この目標の手前にある中間目標を実現するべく、要素技術研究機や一次試作機などを作り上げたのが現在の状況だ。それを手掛けるメンバーは主だった国内企業がほとんど参加しており、「これで(海外に)負けたらどうしようもない」(京極氏)というくらいの体制を組む。