「ハードウエアスタートアップ」と呼ばれるような、独自のハードウエアを軸にしたサービスを展開するベンチャーの起業が盛んだ。これまで米国が中心だったが、最近では日本発のハードウエアスタートアップが増えてきた。事業化する上でのハードルは幾つかあるが、日本での最大の課題は、製品を量産することだ。そこで、日本の製造技術を活用し、スムーズな量産を支援する“黒子”が登場している。
量産に成功するのはわずか2割ほど─。これは、「Kickstarter(キックスターター)」や「Indiegogo(インディゴーゴー)」といったクラウドファンディングサービスで、目標額の資金を調達したハードウエアスタートアップのうち、製品の量産に至った割合である。量産を前提にした試作品、いわゆる「量産試作品」を作る段階で、多くのハードウエアスタートアップが挫折する(図1)。そこで、ハードウエアスタートアップが自社製品を問題なく量産できるように支援する“黒子”役の企業や人物が日本で活躍するようになった。
最近増えているハードウエアスタートアップの多くが、もともとスマートフォン向けアプリケーションソフトウエア(アプリ)などを作っていたソフトウエア開発者が興した企業である。アプリだけでは差異化が難しいサービスを、専用のハードウエアと組み合わせることで独自性を高める狙いがある。
ただし、ソフトウエア開発の出身者が多いだけに、「ハードウエアの量産に関する知識や経験が不足している」と、ハードウエアスタートアップの量産支援者の多くが口をそろえる。ハードウエアスタートアップは、ベンチャーキャピタル(VC)やクラウドファンディングで資金を調達したり、展示会に出展したりするのに必要なデモ用の試作品を、数個から数十個ならば作ることができる。ところが、1000個以上の量産を念頭に置いた量産試作になると失敗したり、手直しが繰り返されて予算を大幅に超えたりして、頓挫する。