(写真:Getty Images)

ムーアの法則が終焉を迎えようとする今、多様なチップやボードを組み合わせて大きなシステムを構築するアーキテクチャーが求められている。この実現のために慶応義塾大学 教授の黒田忠広氏が提案するのが近接場結合集積技術である。チップ間を結ぶ従来のワイヤーボンディングやボード間を結ぶコネクターを代替でき、これらの技術よりも電力効率が高く、低コストで、小型である。今回は、この結合技術について解説してもらう。(本誌)

 前回、エレクトロニクス技術の進化において電力効率向上こそが至上命題だと述べた。チップレベルでは、とにかく低い電圧で動作させる努力が必要だ。ただ、ムーアの法則が限界を迎えつつある今、もはや半導体の微細化や材料技術だけでは、何桁もの電力効率の改善は見込めない。チップ単体性能の向上が期待できないため、システムの総体としての性能向上と省電力化をいっそう推進していく必要がある。

 システムの省電力化における巨視的な解決策は、これまで平面上に並べられてきたエレクトロニクス部品を3次元的に組み上げることである。従来よりも信号線と給電線を短く結べ、本数も増やせるため、速度や消費電力の面で有利である。IoTのセンサーノードのように多様なセンサーを接続する応用を考えた場合、これに加えて、システムの処理目的に応じて最適なチップやボードを選んで、おもちゃのLEGOのように組み合わせるシステムを目指す必要がある。LEGOのようなシステムを可能にする技術基盤は、組み合わせの自由という色鮮やかな世界を生みだす。処理性能が高く、省電力で、多様性を育むプラットフォーム。これが今後、我々が目指すべきシステムである(図1)。

図1 高性能なコンピューターへの鍵
ムーアの法則が限界に差し掛かる今、3次元集積や、LEGO型実装が今後の技術開発で必須となる。
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