スズキは、2015年5月に発売した軽自動車「スペーシア」で自動ブレーキ用センサーとしてステレオカメラを採用した(図)。カメラで先行車や歩行者を検知して衝突を回避する。軽自動車で、ステレオカメラを搭載したことと、歩行者との衝突を回避できるようになったは、それぞれ初めて。

図 スズキ「スペーシア」が採用したステレオカメラ
ステレオカメラで先行する富士重工「EyeSight(ver.3)」に比べると、カメラ間距離が短く、全体的にコンパクトに仕上げた。
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 スズキの新しい自動ブレーキシステム「デュアルカメラブレーキサポート」で採用したステレオカメラは、日立オートモティブシステムズ製(表)。日立オートモティブは、富士重工業の自動ブレーキシステム「EyeSight」にステレオカメラを供給している。ドイツBosch社製のシステムなど複数の選択肢があったが「今回は実績を重視して日立オートモティブを選んだ」(スズキ四輪安全・情報設計部第一課長の小澤渡氏)という。

表 スズキと他社の自動ブレーキの比較
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 自動ブレーキで衝突を回避できる相対速度は、車両が50km/h、歩行者は約30km/hである。障害物が止まっていた場合、これらの速度までは、衝突を回避できる可能性が高い。相対速度がこれらより大きくなると衝突被害軽減ブレーキとして働く。

 システム価格は7万円台に設定した。「赤字覚悟の戦略的な価格設定。これまで設定している赤外線レーザー、ミリ波レーダーの価格をベースに、値段が上がりすぎないようにした。約10万円というEyeSightの価格も意識した」(小澤氏)と述べる。

 自動ブレーキのシステム価格(7万5600円)は、ESC(横滑り防止装置)込みの価格。赤外線レーザーを採用している、スズキの「ワゴンR」や「アルト」の自動ブレーキの価格から、ESCの実質価格は2万円程度と試算できる。今回のステレオカメラを使った自動ブレーキシステムの実質価格は5万円程度となる。

 富士重工のEyeSightと比べて、自動ブレーキの検知性能は同等を確保したが、カメラの中心間距離を約16cmと短くしたことで、最大検知距離が70m程度となり、先行車追従機能のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の搭載は見送った。ACC搭載を見送ったもう一つの理由が、車両の性能を考慮してのこと。軽自動車で中型車以上の車両を追従するのは、エンジンやブレーキの性能、快適性の確保などで厳しい面もある。

 歩行者との衝突を回避できる速度はEyeSightが35km/hであるのに対して、スペーシアでは30km/hに抑えている。路面状況によってはスペーシアでも35km/h程度まで対応できるとするが、自動ブレーキを作動させるESCの性能差も影響しているようだ。