トヨタ自動車のハイブリッド車(HEV)の世界販売台数が700万台を超えた。走行状態に応じて、エンジンの駆動力を走行と発電に柔軟に振り分けできるのが特徴だ。その中核技術が“動力分割機構”と呼ぶ遊星歯車機構である。初代から現在の3代目「プリウス」までこの技術が使われている。

 トヨタ自動車が1997年12月に発売した世界初の量産ハイブリッド車(HEV)「プリウス」。2003年9月には2代目、2009年5月には現行モデルとなる3代目に全面改良した(図1)。トヨタはプリウス以外のHEVの車種も増やしており、トヨタのHEVの世界の累計販売台数は2014年9月で700万台を超えた。トヨタの世界での年間HEV販売台数は100万台を超えるレベルに達している。

図1 現行「プリウス」のパワーユニット
FF(前部エンジン・前輪駆動)車用の横置きエンジンに、発電機やモーターなどを組み合わせる。
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 トヨタのHEVシステムは、走行条件に応じて、エンジンとモーターのどちらか、もしくは両方で走行できる。低速域ではエンジンの効率が悪いので、エンジンで発電機を回してモーター走行する。エンジンの特性をより大胆に燃費方向へと振ることを意味している。

 従来のエンジン車は、エンジン単体で幅広い領域で燃費と動力性能の両立が求められていたが、HEVはモーターの力を活用することでエンジンは燃費の良い運転領域を使えるようになる。

 HEVは、これまでのエンジン車では熱エネルギーとして捨てていた減速時の運動エネルギーを、電力として回収して再利用できるメリットがある。また充電インフラが整っていない現在では、電気自動車(EV)の利用には不安があるが、HEVはガソリンを燃料としながら電動化の割合を増やしているため、燃料の補給が容易である。

 一方でHEVには課題もある。エンジンとEVの両方のシステムを搭載するため、どうしてもシステムは重く複雑になる。またエンジン車と比べて、走行中に運転者にフィードバックされる加速感などは、不自然になりやすい。これらの課題については、新型HEVの開発が進むにつれて、システムの小型軽量化と、制御系の高度化によって改善されつつある。