初めて開発したスーパーコンピューターで、世界的な省電力性能ランキング「Green500」の2位を獲得。しかも、採用したプロセッサーや冷却機構は独自に一から開発したもの。複数の技術開発ベンチャーからなるPEZYグループを率いる齊藤元章氏は、矢継ぎ早に鮮やかな成果を上げて業界を驚かせた。大手企業との提携や次世代機の発表など次々に手を打つ同氏に、開発中の技術の詳細と将来構想を2回にわたり寄稿してもらう。(本誌)

(写真:栗原 克己)

 本稿では、汎用的な部品や技術を用いる場合と比べて消費電力当たりの処理性能が格段に高いスーパーコンピューター/HPC(high performance computing)システムの実現手法を述べる。冷却方式、演算プロセッサー、メモリー、インターコネクトといった要素技術に、他社にはない独自技術を採用する。各技術の開発は、筆者が創業したPEZY Computing、ExaScaler、Ultra Memoryという3つの会社で進んでいる(図1)。以下では、これら3社で構成するPEZYグループが現在開発中の技術を解説し、2020年以降を目指した将来構想も併せて紹介する。

図1 3社の独自技術を結集
液浸技術を用いた冷却システムを手掛けるExaScaler、独自のメニーコアプロセッサーを開発するPEZY Computing、磁界結合方式で積層したDRAMを作るUltra Memoryという3社の技術を結集して、独自の高性能スーパーコンピューターの実現を目指す。
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