電機や自動車の業界で脳活動に関する情報を活用している事例を紹介する。トヨタ自動車、パナソニック、東芝といった大手メーカーがこぞって、脳すなわちヒトの見える化に取り組んでいる。脳を刺激することでヒトを元気にしようとする製品開発に取り組む例や、ゼネコンが空間設計に生かす例も出てきた。

 脳波や脳の血流の測定あるいは脳の活動が直接的に表れる身体反応などの「脳情報」。これを活用して“ヒト(脳)に優しい”製品やサービスをつくり出そうという動きがさまざまな業界で進んでいる(図1)。

図1 多様な産業界が脳応用に注目
脳計測を生かせる応用分野の例を広島大学などが進めるCOIプログラム「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」の作成した資料を基に示した。衣食住や健康、移動、教育など多岐にわたる。
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 例えば電機業界。表に出ているだけでも日立製作所、東芝、パナソニックなどの大手企業が取り組んでいる。自動車ではトヨタ自動車やマツダ、ホンダなど「(少なくとも国内では)ほぼすべてのメーカーが関わっている」(脳活用に関わる国内の複数の関係者)。海外の自動車メーカーでもドイツVolkswagen社が活用した実績がある。建築分野では竹中工務店が空間設計に生かしている。飲食業のサイゼリアや印刷業の大日本印刷などでも応用している注1)

注1)ホンダは子会社のホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンで脳の神経回路網からヒトの行動と認知の機構を研究中だ。Volkswagen社は電気自動車の運転の楽しさを定量的に示すために、サイゼリアは食事への反応を定量調査するために、大日本印刷は申込書への記入時に感じるストレスを定量化するために、それぞれ慶応大学の満倉靖恵氏と共に脳波計測で感性を評価している。

 ただし、脳情報の活用への取り組みはまだ始まったばかり。各社ともどのようなデータを計測すべきか、どのように脳を刺激すれば脳に安らぎや緊張を与えられるか手探りで研究しているところだ。そのため、脳情報の研究を行っていることを表明してもその詳細について明かさない企業も多い。以下では、外部にその成果を発表している企業を中心に紹介する。