電機メーカーや自動車メーカーで、脳の活動を可視化して開発に生かす動きが活発になっている。製品を使うヒトについて深く理解することで、従来になかった視点での開発につなげる。モノの性能・仕様を良くする開発から、「脳=ヒト」の感性や情動に訴える開発へ。開発指針に、脳という新たな基準が加わる。

 「ヒトをわくわくさせるにはどうすればよいのか」。広島大学大学院 精神神経医科学教授の山脇成人氏が、マツダなどと進めている研究テーマの1つだ。わくわく感とは、将来の自分の行動を予測し、過去の経験に照らして生じる心理状態と言える。「わくわくする製品」を開発するためには、わくわく感が生じるメカニズムを明らかにすることが近道になる。そこで同氏らは、どのような環境や順番で、どの五感に働きかけると、わくわくするのかを脳活動の可視化によって体系化し、製品開発に生かすことを狙って研究を進めている。

 「真に良い光とは何か」。東芝は、照明の光源としてLEDを採用するにあたり、この問いに向き合った。行き着いたのが脳活動の計測だ。ヒトは、目が捉えた光をそのまま像として認識しているのではない。環境などに応じて色や形をいわば再構成している。LED照明が市場に登場したばかりのころは、発光効率を示すlm/Wが重要な指標と言えた。しかし、今後は光の“快適さ”が差異化要因になると考えた。快適さの指標を探るため、同社は脳における視覚認識のモデル化を試みたという。