2015年4月にホンダが発売した小型オープンスポーツカー「S660」。その開発責任者を務めたのが、弱冠26歳の椋本陵氏だ。20代の若者が開発責任者を任された例は、ホンダの長い歴史の中でも初めて。他の国内大手自動車メーカーでもほとんど例がないだろう。異例の抜擢を受けた椋本氏に、新製品に込めた思いを聞いた。

写真:栗原克己

 小学生のときに学校の図書室に置いてあった漫画人物伝の「本田宗一郎」を読んで、ホンダにあこがれました。何もないところからバイクを造り、レースに勝って、クルマも手掛けてF1にまで挑む。本田宗一郎がどんどん挑戦する姿勢がかっこよかった。

 高校生のときにたまたま本田技術研究所からの求人があって、これは行くしかないと思いましたね。入社後、和光研究所でクルマのエクステリアのモックアップを作るモデラーになりました。仕事は面白かったですよ。ただ、デザイナーの案を形にするだけではなく、自分で何かを提案する仕事もやってみたいとの思いはありました*1

*1 実際、デザイン部門内で1回/年程度開催されるデザインコンペによく応募していた。モデラーとしては珍しかったという。