携帯端末に息をふきかけるだけで、がんなどの病気を早期発見できる。数年前までおとぎ話だと考えられていた技術が、近い将来に現実となる可能性が出てきた。パナソニック、東芝、日立製作所などが世界の研究機関や企業と共に、開発にしのぎを削っている。実現すれば、これまでの医療/ヘルスケアの世界が大きく変わることになる。

 においセンサーがもたらす影響の中でも、最も社会的インパクトが大きいと言えるのが、呼気診断への応用だろう。呼気中の揮発成分の組成を調べて病気を診断する技術で、医療を大きく変えていく可能性が高い。

 呼気や尿のにおい、そして体臭を用いた診断の歴史は長い。古くは古代ギリシャの哲学者で医者であるヒポクラテスが提唱した。現代でも体臭や呼気のにおいが診断指標として使われている注1)

注1)例えば、糖尿病は「リンゴ臭」、ジフテリアは「甘味臭」、新生児で見つかるフェニルケトン尿症はカビ臭といった具合である。既に、胃がんの原因の1つとされるヘリコバクターピロリ菌を保菌しているかどうかは、呼気を分析して検査されている。