視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚から成る「五感」の中でセンサーとしての開発が最も遅れていた嗅覚を、携帯端末に実装する動きが目立っている。感度の点でも分析能力の点でも性能が低い人間の鼻に代わって、人間が気づかなかった情報を大量に提供する。食品や薬物、火薬などのにおいの検知に加え、がんなど各種の病気診断にも役立てられそうだ。

 においを嗅ぐ鼻の機能を備えるスマートフォンが早ければ2~3年の内に市場に登場しそうだ。複数のメーカーが2017年の製品投入を目指して開発を進めているからである。特定の成分については犬の鼻に近い水準の性能を備える可能性が高い。社会へのインパクトは非常に大きいといえる。

 スマートフォン内蔵とまではいかなくても、既に、口から吐く息(呼気)や尿のにおい、室内のにおい、食品のにおい、火薬や薬物のにおいを検知する小型センサーの開発例が急激に増えている(図1)。

図1 ガス/においセンサーが一気に開花
最近開発、または考案されたガス/においセンサーとその用途を示した。室内空気質(IAQ)と呼ばれる室内の揮発性有機化合物(VOC)濃度を測るセンサー(a)、呼気の揮発性硫黄化合物(VSC)濃度を測定する口臭センサー(b)、呼気や腸内の水素ガスセンサーの試作品(左)やイメージ(右)(c)、ガンを発見可能な呼気中VOCセンサー(d)、ワインやチーズの香りが分かるセンサー(左)と魚介類の新鮮さが分かるセンサー(右)(e)、火薬や危険ドラッグの検知用センサー(f)。
(写真:(a):各社、(c)右はRMIT University Nam Ha氏、(d)左は、Environics社。(e、f)は各社、各大学)。
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