大学での研究成果を生かした起業が日本で今、増えている。中でも勢いがあるのがハードウエア系ベンチャーだ。ベンチャーを支援する日本人が登場したことやハードウエア開発が容易になったことが後押ししている。大学での起業家教育や起業家支援が充実し、学生の起業も増えてきた。

 紙とインクで作る安価な農業用センサーから、臓器を作る3Dプリンター、マイクロ波を用いた低消費電力な化成品製造技術まで。日本の大学を起点に、画期的な製造技術や新発想のハードウエアを競争力の源泉にするベンチャー企業が、次々と誕生している。

 これまでの日本の大学発ベンチャーといえば、IT分野やアプリといったソフトウエアを主とした企業が多かった。ところが最近、エレクトロニクスや自動車、製造といった、いわゆる重厚長大な産業分野での成功を目指す大学発ベンチャーが増えている。

 最大の理由は、日本の産業への強い危機感にある。大学発ベンチャーの創業者の多くが異口同音に唱える起業理由は、「日本に漂う閉塞感を打破し、活気を取り戻す」こと。その実現手段が、大学での画期的な研究成果を事業に結び付けることである。しかも、日本市場だけでなく、輸出産業として大きく成長できるように、最初から世界市場への展開を見据える点も、これまでとは異なる。