組み込みソフトウエアのベンチャー企業、ACCESSを創業し、NTTドコモの「iモード」の基盤技術を開発した鎌田富久氏。現在はハードウエアのスタートアップ企業を支援するエンジェル投資家として活躍する。同氏に、国内でベンチャー企業を育成・活用する上での課題や、大企業とのすみ分けなどを聞いた。(聞き手=今井拓司、中道 理、根津 禎)
――ベンチャー企業を支援するようになった経緯は?
ACCESSを大学4年生のときに荒川亨さんと始めて、ずっと組み込み機器向けのソフトウエアプラットフォーム作りを28年間やってきました。ちょうどインターネットが広まるときで、すべてのものをネットにつなぐってミッションを掲げて、ソフトウエア側からずっとやってきた。取り上げてもらったiモードの件(日経エレクトロニクスの連載「iモードと呼ばれる前」)のような携帯の事業は非常にうまくいったんですけども。元々あらゆるものをネットにつなげることにすごく興味があったんですよ。
ただ私たちがベンチャーをやっていた頃って、ハードウエア事業ってベンチャーでは事実上できなかった。在庫も抱えなきゃいけないし、資本力もいるので。そういうのは好きだったんですけど手が出ない領域なので、ソフトでできることを頑張ってやっていたわけです。
50歳を契機にACCESSを退任して、今の若い人たちがだんだんベンチャー企業を立ち上げるようになってきたって聞いたんで、後輩の東大の学生たちが本当に起業に興味があるのかなと思って3年前から手伝い始めたんですね。東大で起業家たちが協力する講義も2年前からできて、たまに行ってしゃべったりし始めて。そうしたら意外とやりたい人が増えてきていた。