アイシン精機と千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)が2015年3月17日に発表した電動型のパーソナルモビリティー(1人乗り移動機器)「ILY-A(アイリーエー)」(関連記事)。
座って搭乗したり、立ち乗りしたりとさまざまな乗り方・使い方に対応できる「変形」機能。さらには、自動運転車で使われる測距センサーであるLIDAR(light detection and ranging)で実現した自動ブレーキ機能など、ILY-Aは派手な面ばかりに注目が集まりがちだ。しかし、実はその設計の根幹には、人間が搭乗して使う機器として必要な安全を確保するための地道な努力が隠されている。
ハザード分析で300個もの危険事象を抽出
アイシン精機と千葉工大といえば、安全設計やロボティクス技術に詳しい読者であれば、聞いたことのある組み合わせだろう。
両者は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2011年から2013年に掛けて実施した「生活支援ロボット実用化プロジェクト」に共同で参画していた。最高時速10kmで移動できる電動車椅子型の搭乗型ロボットを開発し、各種センサーによる障害物検知や衝突安全性、走行安定性などの検証、特区による公道走行実験などを通じ、今回のようなパーソナルモビリティーの安全性について数多くの知見を培ってきたチームである。
安全性を確保する上での定石は、ハザード(危険事象)の抽出・解析といったリスクアセスメントだ。IEC 61508やISO 26262といった機能安全規格でも、最初にまず行うべきは安全に関するリスクアセスメントである。
NEDOのプロジェクトでは両者は、パーソナルモビリティーについて「前から来る自転車を避けようとして道路横の溝に落ちる」「片輪を段差に乗り上げて転倒」など、約300個ものハザードを抽出し、リスクを評価。これらすべての発生頻度や回避可能性を評価した上で、社会的に許容できないと思われる約100個のハザードに対するリスク低減策を施し、安全性を担保している。