逼迫する移動通信のデータトラフィックをオフロードする方法として、無線LANなどに使用されている5GHz帯をLTE通信に活用する技術が検討されている。無線局免許が不要な周波数帯を、無線局免許が必要な周波数帯と束ねて通信を高速化する「licensed assisted access(LAA)」だ。3GPP TSG-RAN WG1の議長を務めるNTTドコモの永田氏に、LAAの基本的な考え方や規格化の動向、技術的な課題などを解説してもらう。(本誌)

 近年、移動通信では動画コンテンツなどの増加によってトラフィック量が急増している。米Cisco Systems社の予測では、2014年に2.5エクサバイトだった全世界の移動通信における月平均のトラフィック量は、2019年にはその約10倍の24.3エクサバイトに達するという。こうしたトラフィック量の増大に対応するため、広帯域の周波数帯が必要とされている。日本では2014年12月にLTEを高度化した通信方式である「LTE-Advanced」向けとして、3.48G~3.6GHz帯が移動通信事業者に割り当てられた。

 移動通信システムの標準化プロジェクトである「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」では、無線局免許が必要な周波数帯(ライセンス周波数帯)の補完的な位置付けとして、無線局免許が不要の周波数帯(アンライセンス周波数帯)をLTE通信に活用する提案が移動通信事業者や通信機器メーカー(中国China Mobile Communications社やスウェーデンEricsson社、中国Huawei Technologies社、米Qualcomm社など)によって行われた。無線LANなどに使われている5GHz帯をLTE通信で使用する「licensed assisted access(LAA)」と呼ぶ技術である。(図1)例えば日本の場合、5GHz帯では200MHz程度の周波数帯域幅(屋外利用可能な帯域)を使用できる。これは、2015年1月末の時点で各移動通信業者に割り当てられている1グループ当たりのライセンス周波数帯の合計と同程度の帯域幅である注1)。本稿では、ライセンス周波数帯を用いる既存のLTE通信をアンライセンス周波数帯に拡張する方法の1つとして期待されるLAAについて、そのコンセプトや規格化の動向、解決すべき課題などを解説する。

注1)NTTドコモが200MHz、KDDIグループ(KDDI+UQコミュニケーションズ)が200MHz、ソフトバンクグループ(ソフトバンクモバイル+ワイモバイル+Wireless City Planning)が210MHzである。
図1 5GHz帯のエリア内で“ボーナス的”に通信を高速化
LAAと5GHz帯を無線LANで使用する従来の運用方法との違い。5GHz帯でLTE通信を行い、ライセンス周波数帯による従来のLTE通信と束ねて使用する。
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