「業界に革命を起こす」。日本の家電業界に風雲児が現れた。製造業の本流といえる家電メーカーでありながら、脱メーカーを強力に推進しようと目論む。自らを「新参者」と称し、日本の家電業界の慣習やしがらみに風穴を開けようとする伊藤嘉明氏にその思いのたけを聞いた。

写真:栗原克己

 2014年2月1日にハイアールアジアの社長に就任する前は、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントのホーム・エンタテインメント部門で日本と北アジアの代表を務めていました。ハイアールから声が掛かったのは2013年6月ごろです。私の前職は、世間の一般常識からすると、「業界が違うじゃないか」となると思います。ただし、そもそも私のこれまでの経歴って、全て業界が違うんですよ。意図的にそのようにしています。

自らを「新参者」と称する

 自分が目指しているのは、まだ道半ばではありますが、どこでも名を馳せる一流のビジネスのリーダーになることです。本当に優秀なビジネスリーダーというのは、業界に関係なく、しっかりとした仕事ができる人だと思います。こうした考えの下、あえて違う業界を選んできました。その過程で業界の大先輩たちから毎回のように、「あなたは業界が分かっていない」と言われてきました。

 ちょっと待ってください。では、そういった人たちがイノベーションを起こせていますか。あるいは経営不振の企業を再生できたか。できていないですよね。再生ができなくて、その事業が傾くから部外者である私に声がかかるわけですから。それで、いざ私が入りましたと。すると、いわゆる彼らが言う「常識」が、実は世間から見ると「非常識」というケースが非常に多いことが分かった。

写真:栗原克己

 私は今、自分のことを「新参者」とか「よそ者」と表現しています。これによって、外から見て「なぜやらないの?」ということをあえて言える立場に自分を置いているわけです。つまり、自分の職務として、「業界の中にいたら目が曇って見えなくなってしまったこと」、あるいは、「その業界の慣習とかしがらみにとらわれて、がんじがらめになって、何もできなくなってしまったこと」について、それを崩したり、目を覚まさせたりすることを課しているのです。嫌われようが、何を言われようが、この役割に関しては妥協しないようにしています。