1つの素子で、熱や音、光のどのエネルギーも微小電力に変換できるエネルギーハーベスティング向け技術が登場した。開発したのは東北大学である。これまでに温度差と音波を微小電力に変換する技術を開発したのに続き、今回は「光から微小電力を得る新技術を開発した」(東北大学 金属材料研究所 准教授の内田健一氏)とする。

新たな研究分野が誕生


 内田氏が所属する東北大学の研究室は、温度差や音波を「スピン流」(スピンの流れ)に変換する技術を次々と開発してきた。スピン流に変換した後に、微小電力に変換して取り出す技術も確立している。

 2008年には磁性体に温度差をつけるとスピン流が生じる「スピンゼーベック効果」を発見し、2010年に絶縁体でもスピンゼーベック効果が生じることを明らかにした。これにより「spin caloritronics」という新たな研究分野が誕生し、東北大学はNECと共同で新たな熱電変換素子の実現に取り組むことになった。その後2011年には、音波からもスピン流を生成できることを見いだしている。

 そして今回、東北大学は日本原子力研究開発機構と共同で、絶縁体に光を照射してスピン流を生成する技術を開発した注1)。光の実験で用いた素子で、温度差の微小電力への変換が可能なことを確認しているという。

注1)2015年1月8日(英国時間)に「Nature Communications」にて研究成果が公開になった。