中国や台湾、東南アジア諸国といった新興国・地域のメーカーは技術力を高め、性能と品質に優れた低価格の製品を大量に供給できるようになってきた。韓国メーカーの薄型テレビや半導体、スマートフォンなどは既に世界のトップレベルだ。こうした厳しい競争の中、日本のメーカーに求められているのは、新しい価値を生み出すためのイノベーションである。しかし、これが難しい。

 イノベーションで目立っているのは米Apple社や米Google社など米国勢。日本の製造業はやや旗色が悪い。「付加価値の高い製品を開発せよ」「顧客が感動する製品を造れ」「今までと同じじゃダメだ。何か新しいことを考えろ」などと経営陣やマネジャーが指示を出しているが、具体性に欠けているのが実情だ。これでは現場は何をしてよいか分からない。

 一方、経営陣やマネジャーの側にも部下に対して根強い不満があるようだ。典型的なものは、「上司からの指示がないと動かない」「ちょっとした壁であっても、ぶつかるとすぐにあきらめる」─など。中には、若者に対して「ゆとり教育世代だから(ダメなんだ)」あるいは「草食系だから(ダメなんだ)」などと世代論を持ち出す人までいる。しかし、これは前向きな姿勢とはいえない。