中堅自動車部品メーカーの八千代工業の開発本部が、外部の研修プログラムを活用した若手設計者の教育に取り組んでいる。一般に工学的な基礎講座などを除けば、設計者はOJT(On the Job Training)を通じて設計のプロセスや仕事の進め方、ノウハウなどを学ぶ。同社のように特別な研修プログラムを導入するのは珍しい。

 3D-CADの普及で自動化が進み、若手設計者の考える力が弱体化しているとの問題意識から、「実情に即した設計者のスキルアップ策として製品開発プロセスに沿った研修を導入した」(同本部第一研究開発部部長の伊東良和氏)。既に狙った効果が得られつつあるという。

手書きでトレーニング

 具体的にはXrossVate(本社東京)から講師を招き、設計者スキルを高めるため2014年2~11月までの約9カ月にわたって2週間に1度の半日研修を計18回実施した(図1、2)*1。設計者自身の成長と開発レベルの底上げを狙ったもので、「具体例検討を通して頭と手を総動員するカリキュラムを行う」(XrossVate)のが特徴。プログラムを提供したXrossVateにとっても初の試みだ。

*1 XrossVateは、製造向けコンサルティング会社であるO2(本社東京)の子会社。研修はXrossVateが提供している設計者教育プログラム「ゼロから設計マン」に基づいている。

図1 研修の様子
12人が2グループに分かれて1回につき半日ずつ研修を受ける。
図2 八千代工業での研修プログラムのスケジュール
図3 反転形状図に取り組む受講者
製品形状から、金型をイメージした反転形状のアイソメ図を描く課題(上)。研修以前は手書きでアイソメ図を書いたことのない受講者がほとんどで、四苦八苦していた(下)。
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 参加者は各部署で将来のリーダーと期待されている20代後半から30歳前後の若手設計者12人。開発プロセスにおけるアイデア出しから量産に至るまでの過程をなぞりながら、演習問題として出された課題に取り組んだり、受講者同士で議論したりという実習の中で、「説明する・考える・議論する」といったトレーニングを積む。同時に、アイデアの出し方、製造部門も含めた多面的な図面のチェックの仕方、他部門に設計意図を伝えるためのポイントなどを学ぶ*2

*2 製造現場に出向いて、現物を確認するといった実習も取り入れている。

 通常の業務ではできない訓練も積んだ。例えば、全18回の研修では毎回、提示された3面図を見てそのアイソメ図を描いたり、金型をイメージして製品形状の反転形状のアイソメ図を描いたりする課題が出された(図3)。あえて手書きさせることで、頭の中で形状を認識するスキルを高めるのが狙いだ。「普段手書きで図面を描く機会がないので非常に勉強になった」(受講者)という。