クラウドなどのデータセンターで使うコンピューティングデバイスとして、プログラマブルIC「FPGA」が急浮上している。CPUの動作周波数向上が停滞する中、データセンターの性能向上や電力削減の切り札として大きな注目を集めているからだ。

 パブリッククラウドサービスの大手である米Microsoft社の発表が、IT分野の技術者に衝撃を与えた。2015年初頭に、Microsoft社が自社のデータセンターにFPGAを導入すると2014年6月に表明したのだ。同社のWeb検索エンジン「Bing」の処理を高速化するためにFPGAを使う。2014年の試作段階で1632個のFPGAを利用したことから、2015年の本番導入では数千~数万個のFPGAを導入するとみられる(図1)。これまでASICの試作用途や通信機器、テレビなどに組み込まれて利用されてきたFPGAが一転、ネット企業のデータセンターを支えるコンピューティングデバイスとして本格デビューしようとしている。

図1 Microsoft社が自社データセンターにFPGAを大量導入
図1 Microsoft社が自社データセンターにFPGAを大量導入
2014年に1632個のFPGAを使ったシステムを試作した。2015年初頭から本番環境に導入する。Altera社のFPGAを利用する。(写真:Microsoft社)
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クラウド大手がFPGAに

 FPGAに興味を示すネット企業は、Microsoft社だけではない。CPUと比べて電力効率が10倍以上高く、性能も大幅に向上できるFPGAは、多くのIT大手の耳目を集めている。クラウドでのビッグデータ処理や、最近深刻になっているデータセンターの電力問題を解消する有力手段となるからだ。

 例えば、中国のネット検索サービス大手のBaidu(百度)社。同社はニューラルネットワーク技術の一種である「ディープラーニング」を用いた同社の画像検索サービスの実装にFPGAを使い、ニューラルネットワークの学習時間を短縮することを検討している。SNS(social networking service)大手の米Facebook社も、サーバーメーカーの米Hewlett-Packard(HP)社などと共同で、SNSのバックエンドにあるデータベースの高速化にFPGAを利用する検討を進めている。

 国内でも、インターネット広告の高速オークションシステムを手掛けるマイクロアドが2014年秋にもFPGAを導入する。GPUが台頭しつつあるスーパーコンピューターの領域でも、FPGAは次世代のコンピューティングデバイスとして期待を集めつつある。