スマートフォンがカメラに与えた影響の1つが、写真に触れる機会を格段に増やしたこと。写真を撮ることに慣れ、要求が高まっていることはカメラメーカーには好機とも言える。2014年9月に開催されたカメラ関連で世界最大の展示会「photokina 2014」では各社の新提案が相次いだ。

 2011年に1200万台近いデジタルカメラを販売した富士フイルム。2014年の販売目標はその1/6の「200万台」(同社 取締役 常務執行役員 光学・電子映像事業部 事業部長の髙橋通氏)だ。同社が採った戦略は高級機への注力である。「富士フイルムのカメラを愛してくれるファンと一緒に育っていく」(同氏)道を選んだ(「これがラストチャンスだ」参照)。

 カメラメーカー各社は今、新しい競争軸を模索している(図1)。根底にあるのはスマートフォンの影響である。各社は写真専用機としてデジタルカメラの魅力を高めることに躍起になっている。1つの方向性が、冒頭の富士フイルムの高級機への注力である。デジタルカメラを嗜好品の域に高めることに注力する。

図1 スペックとは異なる競争軸を模索へ
図1 スペックとは異なる競争軸を模索へ
撮像素子の画素数や連写枚数などの数値を向上させる競争は終わりを告げた。デジタルカメラは今、新しい競争軸の模索を始めた。
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 「スマートフォン時代になって、写真に触れる機会は格段に増えた。それにつれて、スマートフォンでは満足できない消費者が増えているのを肌で感じている」。スマートフォンがデジタルカメラに与える正の影響を話すのは英Canon Europe社 Director CIG Product Sales & Marketing EMEA RegionのKazuyuki Suzuki氏である。確かに、室内や夜間、素早く動き回る被写体など、スマートフォンでは力不足な場面は意外と多い。

 スマートフォンとの差異化─。2014年9月に開催されたカメラ関連で世界最大の展示会「photokina 2014」では、カメラメーカー各社は写真を「撮る」ことと、撮った後に「見る/シェアする」ことに対して幾つかの方向性を提案した。会場では、画素数や連写枚数など、性能の数値を大々的にアピールしてきたかつての手法は影をひそめていた。スペック競争の終焉は、新しい挑戦の幕開けとなった。