デジタルカメラ市場が急速に縮んでいる。“元凶”は、カメラ専用機並みの画質と通信機器ならではの利便性を備えたカメラ機能を備えるスマートフォンだ。カメラメーカーは、これまでの延長上にはない新しい競争軸の提案を始めた。

 「2014年度中に15%の人員削減を見込んでいる」。ソニー 代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏は言葉を絞り出した。同社は2014年9月17日、スマートフォンを主力とするモバイル事業の構造改革を発表。1000人規模の人員を削減する。その翌日、東芝はパソコン事業の縮小計画を明らかにした。900人を削減する。

 現在、我々の耳に届くデジタル家電に関するニュースのほとんどが暗い。デジタル家電では比較的好調な韓国Samsung Electronics社でさえ、直近の2014年7~9月期決算では連結売上高が前年同期に比べ60%減った。中核のスマートフォン事業の不振が響いたとみられる。

市場は1年で4割減

 あらゆるデジタル家電が苦戦を強いられる中で、今まさに生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているのがデジタルカメラである(図1)。2014年におけるデジタルカメラの総出荷台数は、カメラ映像機器工業会(CIPA)の推定では5500万台 。ピークだった2010年の半分以下に縮んだ。

図1 生きるか死ぬかの瀬戸際は挑戦の始まり
図1 生きるか死ぬかの瀬戸際は挑戦の始まり
デジタル家電の苦戦が続く中、“最後の砦”とされるデジタルカメラメーカーが岐路に立たされている。(写真:左上からソニーモバイルコミュニケーションズ、東芝、キヤノン、ニコン、パナソニック)
[画像のクリックで拡大表示]

 特に深刻なのがコンパクト型デジタルカメラである。2013年の出荷台数はピークから6割ほど減り、「前年比でも4割減」(CIPA)だった。調査会社である米GfK社のカメラ担当アナリストは「低価格帯のコンパクトカメラは、スマートフォンに完全に食われた」と断言する。

 スマートフォンは、「Facebook」などのSNS(social networking service)で撮った写真を気軽に友人と共有したり、タッチパネルで簡単に編集したりできるようにした。これこそが「もっと日常的に写真を撮りたい」という需要を爆発させた。

 同時にデジタルカメラの中核デバイスであるイメージセンサーの陳腐化を加速、スマートフォンとの差異化を難しくした。現在のカメラ技術の中核を担うCMOSイメージセンサーは、アナログICであるCCDと比べて格段に集積度を上げやすい。このためスマートフォンへの搭載で量産が進むと、CMOSセンサーの価格対性能比は一気に向上する。少なからぬ撮像素子の技術者は「デジタルカメラ市場の縮小は、CCDがCMOSセンサーに置き換えられた時点で決まっていた」と言う。