トヨタ自動車は、農業支援システム「豊作計画」を開発し、自動車生産で培った生産管理や工程改善のノウハウを、稲作の作業管理や収益改善に生かそうとしている。

 豊作計画は、米(コメ)の大規模生産法人における農作業を効率的に管理するためのクラウドサービス*1。立案した生産計画を確実に実現するために、分散する各水田の作業について作業スケジュールを管理し、その日行うべき作業をタブレット端末やスマートフォンを介して作業者に指示する(図1)。

*1 豊作計画は、米Salesforce.com社のクラウド・アプリケーション開発基盤を利用して構築した。

図1●作業者の端末画面
手持ちのスマートフォンやタブレット端末でシステムにログインし、その日の作業内容を確認する。GPS機能を利用して自分の位置と作業すべき水田を地図上で確認できるので、当日担当した水田を間違えるといったミスを防げる。作業の着手・完了もシステム上のボタンをワンクリックするだけで済む。
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 これまで勘と経験で大ざっぱに管理してきた農作業において、「PDCA(Plan、Do、Check、Act)という製造業では当たり前のことを行うための仕組み」(トヨタ自動車新事業企画部企画総括グループ主任の喜多賢二氏)。工場で培った作業指示・工程管理などトヨタ生産方式(TPS)の発想を取り入れた。

 現場の作業者は、作業の着手・完了、水田の状況などをタブレット端末やスマートフォンから入力するとともに、管理者は作業進捗や水田の状況をリアルタイムで一元的に把握できる。2014年4月からは愛知県と石川県の農業法人9社で実証試験が行われている*2

*2 農林水産省の「先端モデル農業確立実証事業」の一環。2014年4月から3年かけて豊作計画を運用して、ICTツール活用の効果を探る。