性質の異なる材料を極めて強固に接合する異種材料接合技術の応用が本格化し始めた。自動車では異種金属同士など、電気製品では樹脂と金属、さらに柔らかい材質と硬い材質の組み合わせに注目が集まっている。既存の方法では実現できなかった組み合わせが、部品の軽量化や機能・性能の向上、コスト削減を達成する切り札になりつつある。
何でもくっつける
異種材料接合が変える設計
目次
-
異種材料接合=接着剤・ねじを使わずに強固にくっつける
日経ものづくり
-
日本が世界をリードする異種材料接合、自動車や携帯・産業機器の限界を打破
「自動車部品の質量を4分の3にした」(ホンダ)、「従来品よりも20%近くアクチュエーター・ハウジング(エンジン部品)の質量を削減した」〔京浜精密工業(本社横浜市)〕─。長年軽量化に取り組んできた自動車業界において、このように一気に20~25%もの軽量化を可能にしたのが、異種材料接合技術である。日経ものづくり
-
摩擦撹拌で鋼とアルミを金属結合、25%軽くしたサブフレームを量産
鋼+アルミニウム合金[ホンダ]
アルミニウム(Al)合金を極力増やし、鋼と接合させて大幅に軽量化する。しかも、車両の構造材に使えるほど高い接合強度を満たす─。自動車業界が求める、こうした異種材料接合の実用化で先頭を行くのがホンダだ。日経ものづくり
-
鋼にアルミダイカストを塑性流動、締結要素をなくして質量を18%減
アルミダイカスト+鋼[京浜精密工業]
異種材料接合の技術を生かすことで、大手自動車メーカーからの受注を一身に受け、1カ月当たり2万5000台の生産を勝ち取った自動車部品がある。京浜精密工業(本社横浜市)が開発した、エンジンの可変バルブタイミング機構のアクチュエーター・ハウジング(以下、アクチュエーター・ハウジング)だ(図1)。日経ものづくり
-
強固な金属と電波を通す樹脂を、コンパクトに一体化したスマホ筐体
金属+樹脂[大成プラス]
大成プラスの「NMT(Nano Molding Technology」は、2段階の工程で金属と樹脂を接合する技術である。まず金属表面を薬品で処理して、目に見えない微細な凹凸を設ける。次に、これを金型に入れて溶融樹脂を射出する、いわゆるインサート成形を実行。これらによって、金属と樹脂が結合した部品を造…日経ものづくり
-
柔らかく透明なシリコーンで、防水と生体追従性を付与
PDMS+金属・ガラス・樹脂[フコク物産]
シリコーンであるポリジメチルシロキサン(PDMS)を使い、接着剤を使わずに金属や樹脂などと接合させる技術を開発したのが、ゴムや樹脂の成形品を手掛けるフコク物産(本社東京)だ(図1)。接着剤を使わないため、部品に接着剤の成分が混じることがない。また、溶接や溶着などとは違って材料を熱で溶かさないため、材…日経ものづくり
-
大きく変形しつつ重量物を搬送できる強度を確保
ゴム+鋼[ブリヂストン]
異種材料接合の中でも、歴史の比較的長いものがある。その1つがゴムと鋼の接合だ。タイヤの製造に必須の技術であり、タイヤメーカーはその技術をさまざまな製品に応用している。日経ものづくり
-
銅粉末をAl合金に超音速で吹き付け、堆積速度が速くコスト競争力も高い
銅+アルミニウム合金[ニッパツ]
機能的な必然性がある部分に限ってコストの高い材料を局所的に使い、残りは低コストの代替材料で置き換えて、コスト削減を狙う。その際に、製品の性能も犠牲にしない─。これが、ニッパツが異種材料接合の技術開発を進める理由だ。日経ものづくり
-
硬くて強い部品でありながら、気密性・衝撃吸収性・滑り止め性を確保
ガラス繊維強化樹脂+樹脂[ポリプラスチックス]
樹脂にもさまざまな特性を持ったものがあり、複数の樹脂を組み合わせることで1つの部品に複数の特性を持たせることができる。例えば、硬い部品だがはめ合わせに使うツメの部分のみは弾力性が高い部品、あるいは歯車の歯先は耐摩耗性が高くて中心部は高剛性である部品などだ(図1)。これらを実現可能にするのが、ポリプラ…日経ものづくり
-
現代の“真空管”が分析装置の高度化を支える
ガラス+金属[鬼塚硝子]
ガラスと金属の接合で難しいのは、くっつくかくっつかないかというより、ガラスが極めてもろい性質を持つことだ。単純にくっついただけでは、線膨張係数の違いによって接合部付近のガラスにひずみが生じて、すぐに割れてしまう。接合していないのと同じ結果だ。日経ものづくり
-
90%が「使いたい」技術と回答、試験法の標準化に普及後押しの期待
調査テーマ「異種材料接合技術の応用」
「性質の異なった材料を一体化することによって、新しい価値を持つ製品や部品を開発できる」。多くの技術者がこのように考えており、実現手段として異種材料の接合技術に対する期待は大きいことが分かった。その半面、新たな接合技術の採用にまで踏み切れないケースも多いようだ。採用に向けて技術者の背中を一押しする施策…日経ものづくり